チームの事務所でビニョットさんに会った後、そのまま夜7時からの練習場へ向かいました。
事務所から車で20分ほどのところです。
金網のフェンスで囲まれた天然芝のサッカーコートが一面。
隣接して男女の更衣室があります。
もちろん、シャワーも完備です。
植芝さんも中野さんも女子更衣室には入れないので、ひとりで、恐る恐る更衣室に入って行きました。
既に何人かの選手がいました。
私が入って行くと、皆私の方を見ました。
その中の一人に見覚えがあります。
あー、アンナメガだ!
中国遠征の時に誕生会をやっていた選手。
たしかイタリア選手の中で唯一英語をしゃべっていた。
英語が通じるぞ。
とは言っても私、英語もしゃべれなかった…(笑)
みんな私に興味を持って、近寄ってきました。
というか、私がしていた時計に興味津々だった様です。
一人一人自分の名前を言って、私も自分の名前を言って、握手をしていきます。
私は、最初
「ながみね」
って言ったんだけど、やっぱりみんな
「ん?」
ってなる。
さっさと諦めて
「カオリ」
と言いました。
「カオリ」
と言ったとたん、皆笑いながら、
「あー、カオリねー」
っていう反応。
これは、どこへ行っても同じ反応が返ってくるので、ずっと不思議に思っていたんです。
そしたら、後日テレビを見ていて答えがわかりました。
フィラデルフィアというチーズのCMです。
日本人のカオリという女の子が出てきて、食事を出されて常に「ポコポコ(少しだけ)」と言っているのに、フィラデルフィアのチーズが出された時だけ「タントタント(たくさん)」と言って食べるのです。
おかげで「カオリ」は誰でもすぐに覚えてもらう事ができました。
「ピッポ」
「モニカ」
「ソーニャ」
私は相手の名前を繰り返して確認していましたが、
「ソニア」
と言った時には
「ノンノンノン」
「ソーニャ」
と訂正されました。
アンナメガの順番に来たとき、相手が言うより先に
「アンナメガ」
と自慢げに言いました。
あれ?この子私の名前を知っているのね
と言っていたのだと思いますが、ちょっと不思議そうな顔をしたけど、さらっと流されちゃった。
あれ?
なんで知っているのか聞かないの?
私は中国で会っていたことを話したいのに…拍子抜け。
まぁ、聞いてもわからないと思ったのでしょう。
話題は時計に移っていきました。
更衣室を出た後、植芝さんが
「日本で時計を買ってきてほしいらしいよ。このチームに入ることが決まったらね、と言っておいたけど。」
「アンナメガがなぜ私の名前を知っているのかってびっくりしていたよ。」
と教えてくれました。
練習開始時間が近づくと、続々とメンバーが揃いました。
アンナメガ以外にも知っている選手が何人もいました。
西友カップの時、イタリアが宿泊していたホテル内のバーで、私の隣に座っていたカルタもいました。
パンにオリーブ油をかけて、塩を振って食べると美味しい、この時カルタが私に教えてくれたのですが、向こうはそんな事覚えているハズもありません。
他にも、ボナート、コルデノンス、マリオッティ、私が知っているだけでも代表にいた選手が5人。
そうそうたるメンバーだという事がわかりました。
最初に2列に並んでグラウンドをジョギングするのですが、思い切って列の前へ入ります。
さすがに先頭ではないですが、2,3番に並びました。
わたし、普段あまり人前に出て、グイグイ行くタイプでもありませんし、すごいメンバーだとわかっている中で、その人たちを差し置いて前に出るのにどれだけ勇気が必要だったことか…
想像できますでしょうか?
突然現れた東洋人。
今のイタリアリーグは、外国人枠9人くらいいるそうですよ。
ところが、その当時は1人だけだったんです。
私以外は全員イタリア人ですよ。
「なんだコイツ?」
ってなるよなぁ(笑)
でも列の最後尾を走るのと、前を走るのとでは、伝わるやる気も全然違うでしょ。
その後の練習も、何やるかわからないくせに常に前に並びましたよ(笑)
どうしても、このチームに合格させてもらわなくっちゃ!
っていう覚悟で臨んでいました。
練習は、スキップしたり、ももあげやったり、ダッシュしたり、ボールを使わずコンディショニングでほぼ半分。
この後、軽くセンタリングシュート練習。
センタリングシュートは私の得意分野。
よっしゃ!
と気合が入りましたが、一人ずつではなく、ニアとファーに2人ずつ入るやつだったので、なかなか私の方へはボールが来ず、来てもゴロのセンタリングしか飛んで来なかったので、たいしたアピールにはならなかったなぁ…。
ジャンピングボレーやオーバーヘッドキックなんかをやるボールが来ることを願っていたのですけどね。
最後は紅白戦。
ちゃんとパスも回ってきたし、ここへ来る前もずっと合宿、遠征が続いていたので、身体はよく動きましたよ。
滞在中、練習は3回、練習試合が1試合。さぁ、どんな評価を下される事やら…。