アルゼンチン滞在中に女子チームの練習が無いため、

「プロの男子チームに入って練習してみませんか?」

とディレクターさんに聞かれました。

「無理です。迷惑になるのでやりたくありません。」

とハッキリ答えたのですが、私の意思とは関係なく、アルゼンチンリーグの2部でやっているチームに強制的に練習参加させられました。

 

 サッカー雑誌に載っていたカズの手記だったかなぁ、

「ブラジルのプロは、貧しい人たちが死にもの狂いでチャンスを狙っているから、練習中もファールまがいの激しいタックルは当たり前。」

といった事が書いてあるのを読んだ事があったので、そんな中に日本からテレビ番組の為に女子が入ったら、間違いなくヒンシュクものでしょ?すご~く嫌だったんです。

 

 練習会場に着くと、グラウンドに入る入口の両脇に選手たちが、たむろっていました。

その間をテレビカメラと共に通り抜けなくてはならず、

「なんだこいつら」

という冷たい視線を感じながら…やっぱりやりたくないよう~逃げ出したくなっていました。

 

 そして、まず監督さんに挨拶。

「なんでここに来たか説明して」

と言われ、(なんでか、こっちが聞きたいよ)と思いながら、

「レベルの高い男子の中に混ざって一緒に練習することで、学びたいと思っています」

とか、咄嗟にてきとーな事を言いました。

監督さんは、にこやかでとても感じの良い人です。昔フランスで活躍した選手だということでした。

 

 練習は、マーカーで区切られた4角形のグリッドの中で4対2のパスまわしです。

途中「ピーッ」と笛が鳴り、いきなり全員グラウンドの外周をすごいスピードで走りはじめました。

「何?何?」

と訳もわからないまま急いでついていきます。

グラウンド2周走り終えると皆またパス回しをはじめます。

私が遅れて走り終えると、通訳さんが

「ビリの人がDFだよ」

と教えてくれました。私のグループは既にDF1人で、もうはじまっちゃっています。

あわててDFに参加しましたが、全力で2周走ってきたばかりでヘトへトな状態で、ボールが奪えるわけありません。

しかもボールを奪えないでDFをやっている間は、全く休めません。

たとえボールを奪ったって、また笛が鳴って走り始めたら、私がビリになるに決まってるでしょー!(ビリ2でもダメだぞ)

おとな気(おとこ気)ないぞ!!

 そして無情にも笛はその後も何度も吹かれ、その度にグラウンドを2周回り、常にビリで、DFから抜け出せない私にとって、地獄の様な時間が続いたのでした。(イジメだ、イジメ…)

 

 

その後の練習は、チームの戦術練習だった為、私ははずれ、見学です。(ホッ、助かったぁ)

 

 そして練習の最後の試合にまた参加しました。

試合と言ってもフルコートではなく、小さめのコートだったのでありがたかったです。

コートが大きければ大きいほど、走力が必要になり、コートが小さくスペースが狭ければ技術の要素が大きくなるのです。

笑っちゃうくらいブカブカのユニフォームを着て参加しました。

 

 試合は、削られるという事もなく、ちゃんとパスも回ってきて皆とても紳士的でした。

マークしている相手と駆け引きして裏をとると、ピタっとそこにパスが出てくる。これは嬉しかったですね。

レベルの高いプレーに感動しました。

あわよくば得点!というシーンもありました。

ゴールには入りませんでしたが、周りの選手が手を叩きながら声をかけてくれました。プレーを認めてもらえた瞬間でした。

 

 練習後には、監督さんに、

「どうだった?」

と聞かれ、

「スピードが速いので、自分だけスローモーションの様だった」

と答えると、

「フィジカルは男女の差もあるので、しょうがない部分もある。技術的には男子に見劣りしない。」

と評価してくれたのです。お世辞でも嬉しく、自信になりました。

 

でも結局この日の練習は一切オンエアされず…。(やらなくても良かったんでないんかい?)