ユニフォームが今までの青から赤に、エンブレムも日の丸からカラスのマークに変わりました。男子の日本代表と同じユニフォームが着れるってことが嬉しかったなぁ。

 

 12月にはプリマカップとして、オーストラリアを日本に招いて2試合行いました。

 2-2で引き分けた1試合目で2得点だった私は身体も動きも軽く、絶好調でした。

 2試合目の開始前は、ゲートの閉まったスタート待ちの競走馬の気持ち。早く試合したくて仕方がない。はやる気持ちを抑えながらも、待ち時間にじっとしていられなくて、ずっとストレッチをやり続けていました。

 いざ、試合が始まったら足が重い重い。やっちまった…と思いましたよ。

 私、現役を引退してから、指導者の勉強をしていますが、数年前、指導者講習会に参加した時、偶然、講師がりょっぺいさん時代に当時学生で手伝いに来てくれていたヨドちゃんでした。

 ヨドちゃんが言っていました。

「試合前に静的(止まったままの)ストレッチをやりすぎると筋肉が緩みすぎてしまいます。今は動的(動きながら)ストレッチをやるように指導しています。」

 それを聞いた時、(私、何年も前にそれ知ってた)と思いましたよ(笑)誰も教えてくれなかったけど、失敗して学んでいったんです。

 

 オーストラリアとの試合の結果は木岡さんがPKを決めて1-1で、結局2試合とも引き分けでした。

 

 プリマカップの直後には、香港に行き、第7回アジアカップを戦いました。

 Aグループに中国、台湾、韓国、タイ。

 Bグループに日本、インドネシア、香港、ネパールという組み合わせです。

 明らかに強いチームがAグループにかたまりました。アジアでは実力差が大きい。

 

 予選リーグどの試合も大勝し、1位でAグループの2位だった台湾とあたります。

 あまりにも予選リーグで戦ったチームとレベルが違いすぎ。スピードに慣れる前に、またもや周ちゃんにやられちゃった。

 0-1で敗れ、中国、台湾に続き3位になりました。なかなか台湾には勝てません。

 中国とも試合が出来なくてがっかりです。

 しかも強いと思われる北朝鮮は大会に参加していないのです。

 

 1990年私が大学4年生の時に、初めてアジア大会の種目に女子サッカーが加わり、北京大会から私たちも参加できることになります。

 アジア大会っていうのはオリンピックのアジア版みたいな感じ。

 サッカー以外の競技も一緒に行うやつです。

 

 7月の終わりに候補合宿を検見川で行い、8月に静岡の清水で毎年やっていた全日本チャンピオンズカップに日本代表チームとして参加し強化をはかります。

 

 この大会で代表デビューしたのが水間。ズバ抜けた運動能力で、日本リーグに参戦していない浦和本太レディースというチームから彗星のごとく現れた。

 リフティングも上手くて、ボールの周りをくるくる足を回す。

 私も出来るようになりたくって、水間に教えてもらって練習していたんだけど、ボールの周りを回そうと足を回した時に『グキッ』ってなって、激痛が走った。

 大したことにはならなかったけど、それ以来怖くって、この技は封印しました(笑)

 

 代表チームの練習後には私はいつも誰より先に宮内さんのところへ行って、「センタリング上げてもらえませんか?」ってお願いに行っていました。居残り練習です。

 サイドから宮内さんが蹴ってくれたボールを私がゴール前で合わせるんですが、「入れて~」って、みんな集まって来て、あっという間に順番待ちの行列です。

 さすがに宮内さんを独り占めはできません。

 それでも、そのうち一人減り2人減り、暗くなっても最後までやり続けるのはいつも水間とでした。

 「たのしー!」って叫びながら暗くなっても水間と私はやり続けていましたね。ヘディングで行くべき高いボールも、わざと足でいってね。

 ジャンピングボレーとか、アクロバティックなキックが出来るのは、芝のグラウンドと良いキッカーがいないと出来ないんですもの。

 

 それから、よくたもつさんに、「水間と長峯は試合に出さないと、なんで出れないんだって後でうるさいんだよ。」って言われてましたが、

 私は「なんでこのアタシが試合に出られないのよ!」と言っていた訳ではなく、

 たもつさんもわかってくれていたとは思いますが、自分の至らなさは重々わかっているんです。

 でも、自分が気づいていない至らなさもあるかもしれない。

 監督に確認に行くのは、今後に生かすため、向上心からの行動です。もっともっと上手くなりたかった。

 

 水間がどうだったか聞いたことがないのでわかりませんが、私に負けず劣らずのサッカー大好きっ子だという事は間違いないでしょう。

 

 話をチャンピオンズカップに戻しましょう。決勝は、宮内さんが指導して急激に力をつけてきたプリマハムと対戦。

 代表チームが1-0で勝って優勝しますが、私は、プリマの梅ちゃんに抑えられてなかなか思うようにプレーできなかったんです。

 それ以来、梅ちゃんは私の天敵です。

 とは言え、梅ちゃんと私生活ではトレーニング仲間です。

 この何年も後になりますが、梅ちゃんがグランド脇で奇妙な動きをしていました。

「何してるの?」

「鳥取にあるワールドウイングっていう所で教わった股関節スクワットです。」

「あ、知ってる。こないだ読んだ新聞に載ってたよ。行きたいなぁって思ってたんだ。すごい興味ある!」

「えー、じゃぁ今度のオフに一緒に行きませんか?」

って、この時初めて言葉を交わしたにも関わらず、お互いのチームの練習がオフになる度に鳥取に通う仲になっちゃった。

 

 ワールドウイングっていうのは、小山裕史っていう先生がやっていたスポーツジムで、それまでの常識的なトレーニングとは一線を画すものでした。

 種目を問わず、身体の動かし方、トレーニング方法を教わる事が出来ました。

 一般のトレーニングでは、やればやるほど身体が硬くなるのに対して、ワールドウイングでのトレーニングは、やればやるほど筋肉がほぐれてくるという不思議なものでした。

 ケガの回復も驚くほど早いと新聞には載っていたのです。

 野球選手、ゴルファー、スピードスケート、陸上選手など、有名な選手がたくさん来ていて、一緒にトレーニングするんですよ。とても刺激的でした。

 

 普段でもトレーニング出来るようにと、梅ちゃんは何百万もするワールドウイングで使っている初動負荷のトレーニングマシンを自分で買ってプリマハムのクラブハウスに置いちゃった。

 トレーニング大好きっ子梅ちゃんには、わたくしとても及びません(笑)