【400文字作文】すまんが今更それは尚更なんじゃないの。

誕生日だろ。おめでとう。と、俺は灰色の
姉に言った。俺は一度だけ、女を殴ったこと
がある。もちろん悪意は無かったが、その相
手は今は灰色の、姉だった。
何歳の時かは忘れたが、俺の拳が姉の腹に
当たった瞬間のことはいまでも覚えている。
右手に感触と感傷が残っている。
姉の柔らかい腹に自分の拳が減り込んだと
き、これはまずいことをしたと後悔したが、
姉はウッ!と呻いた後にすぐ「別に……」と
いう表情をした。
女がとても柔らかい生き物だということを
その時、知った。あの時感じた柔らかさは未
だ右腕に残っている。迷惑な感触と感傷だ。
姉は、いまさら祝われても嬉しくないと言
うだろう。俺は、いまさらで悪いなと言うだ
ろう。
俺は彼女が白くて黒い頃に「おめでとう」
と言った記憶が無い。今更で申し訳ないが、
灰色の姉に伝えたい。おめでとう。