【400文字作文】たまごごごはん

6時間前に炊きあがった炊飯ジャーの蓋を
開ける。乾いた匂い、がした。「老う」とい
う言葉を連想しながら、やや大きめの茶碗に
「飯」をつぐ。
白い茶碗に入った「飯」は黄ばんで見え、
悲しかった。が、悲しみに沈んでいてはいけ
ない。ヤカンを火にかける。「至福の、アフ
ター茶」という快楽のために。
卵は二つ、準備する。ざらりとした卵を触
るといつも私は「月」を連想する。
卵@1は丸ごと。卵@2は慎重にカラを割
り、ふたつに割れた殻を使って白身を落とし
黄身だけを。つやりと光る黄身を見て正しく
は「月見」ではなく「月身」かもしれんな。
と想う。仕上げに醤油をひとすじ流し、やや
下品な音をたてつつ、かきまぜる。
台所で立ったままそれを喰っていると、ふ
と袋に入った「味付けのり」と目が合う。破
るべきか、破らざるべきか……。
湯が沸きヤカンの蓋が、かたかた鳴った。