【400文字作文】為という字は偽という字に

夢の中で僕が殺したのは男か、女か。知人
か。他人か。覚えていないが、十二人という
人数だけは、覚えていた。
瞼だけをゆっくり開く。窓を見る。窓の外
はとても灰色で、たゆんとした電線が、北風
に揺れていた。それは、誰もいないブランコ
を連想させた。
僕は夢の中で拳銃のような武器を使ってい
たことを思い出し、その十二人を撃つと、何
人か「ああ、良かった!」という笑顔で僕に
近づいてきたのを思い出した。僕は誰を撃ち
誰を、助けたのだろう……。
窓の外ではまだ電線が揺れている。僕は少
しだけ起き上がり、窓に映る半透明な自分の
顔を見た。思い出した。
僕が殺した十二人は全て「僕自身」だった
ことを。笑顔で近づいてきた人達は、僕の家
族だったことを。
ノックする音と母の声が、向こう側から聞
こえた。僕はまた、布団を頭から被った。