【400文字作文】揺れるユゲ | 【400文字作文】下半身は地球を救う。

【400文字作文】揺れるユゲ

 夢を諦めるまで時間はかかったが、この店
を出すまで時間はかからなかった。客はビジ
ネスパーソンが多く、それらの客はこういう
店を持ってノンビリと暮らすのが夢だ、と微
笑みながら言う。夢を諦め、生活のためにこ
の店を出した私には、夢だとかノンビリとい
う単語は理解できなかった。そういうことを
言う客の方がノンビリしているように見えた。
 コーヒーをサイフォンで抽出するスタイル
とポテト料理は受け入れられたが、時間と空
間だけを売るカフェが進出しだすと、私の店
はあっけなく閉店に追い込まれた。
 全てを失って孤独だ、なんて言うつもりは
無い。夢を追っていた時の方が孤独だった。
 緑や赤い文字で書かれた督促状を破りなが
ら孤独ではないけど、傍に誰もいないことに
気付いた。私の傍で呼吸しているのはコーヒ
ーだけだ、という想いを蒸発させたくてお湯
を沸かしている時、店のシャッターを誰かが
うるさく揺らした。