前回の続きです。
滞在二日目。
朝、といってもまだ暗いのだが、目覚ましで起きて朝食へ向かう。一度氷点下30℃の寒空の下に飛び出し、急いでダイニングスペースのあるメインブロックに入る。一瞬であればそんなに寒さを厳しく感じることもない。
ポーラーロッジは、非常に質素ではあるが朝食が付く。炭水化物ばかりではあるが、オレンジジュースやチーズでビタミン、蛋白質もとっておく。こんな極地では朝食がもらえるだけありがたいというものである。コーヒーで目を覚まし、早速受付で、宿を切り盛りするデンマーク人のおっちゃんにブーツのレンタルをお願いする。昨日外に出てよくわかったが、足元がああも脆弱ではろくに外を出歩けはしない。ブーツは一泊約3,000円とまぁそれなりにいいお値段であるが、必要経費として迷わず借りることにした。
ブーツ自体は少し離れた別の小屋で管理しているということで、おっちゃんの車に乗り込み、その小屋を目指した。
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朝の空港側
うっすらと明るくなってきているが、12月のカンゲルルススアークに太陽が昇りきることはない。このまま地平線沿いをなぞるように東へ進み、そして14時前には彼方に沈む。どこか神秘的な景色である。
朝のメイン通り
少しずつ明けてきた
朝のメイン通り
カンゲルルススアークでもう一件営業しているオールドキャンプというホステル。この宿の前にレンタル器具の管理小屋があった。
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ソレルのブーツ
ブーツはソレルの寒冷地用のもので、重量はあるが、断熱効果は非常に高い。昨日のオーロラ撮りの予行演習で分かった通り、体幹は氷点下30℃とはいえ簡単に低体温になったりすることはないのだが、足と指はすぐにやられてしまう。実際、昨日は太陽が出ているうちにカンゲルルススアークを散策しようとしたのだが、寒さに耐えきれずにすぐに戻ってきてしまった。しかし、このブーツがあれば徒歩での行動可能範囲が増える。早速カンゲルルススアークの周辺を歩いてみることにした。
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昨日は宿を出て西に向かって歩いて行ったが、今日は内陸方向、東向きに歩いてみることにした。ブーツをレンタルした小屋は宿から見て西向きだったので、図らずも昨日到達できなかった、宿の人お勧めのオーロラ撮影ポイントに到達することが出来たのだが、鑑賞はともかく、撮影にはあまり良いところではなさそうだった。
確かに街灯が少なくなって暗そうではあったが、飛行場の明かりはあるし、地形的には山の陰からオーロラを見上げる形になってしまい、見晴らしが悪い。しかし、反対の内陸向きであれば、地形的には徐々に丘を登る形になるので、もしかして撮影によりより場所を見つけることができるかもしれない。
そんな期待を胸に、今日は東に歩みを進めることにした。
東に向かって
泊っている宿から向かって西の方向には、夏季限定営業のユースホステルがあるなど、まだ建物が続くのだが、今歩いている東の先にはもう人の住む建物はない。35kmほど先に進んだ終点にあるのは氷河である。そんな道を進むにつれてどんどん人里から離れて行くが、次第に見晴らしが良くなってきた。
振り返って
道の先
そのうち、小高い丘の上に出た。宿の人に薦められたポイントは、上の写真の右手に移っている山の影のあたりだが、この開けた丘の上であれば、どの空にオーロラが出てもしっかり撮影することができる。ただし、ここまでは歩いて20分程度かかる。オーロラが出た、と思ってから宿を出ては遅いだろう。カナダのイエローナイフに半年滞在していた友人が言うには、オーロラは「動くもの」であり、出たと思ったらすぐに反対側の空の彼方に消えるという。その点では、宿の人に薦めてもらったポイントの方が、宿の中で暖をとりながら空をチェックし、出たと思ったらすぐに向かう、ということもできて良いだろう。
「オーロラは撮影ポイントで何時間粘れるかが重要だよ」
その友人の言葉が頭に浮かんだ。
こんなところで一人でどうやって待とうか…などと考えつつ、夜のオーロラツアーに備えて、宿へ踵を返した。
続きます。










