2015年12月にグリーンランドにてオーロラを撮影してきました。
オーロラの撮影をされる方の参考になればと思い情報をまとめます。
0. 概論
1. 撮影地/時期選び
1-1. 撮影国
1-2. 季節
1-3. 月の有無
1-4. ツアーか個人か
2. 撮影地での過ごし方編
2-1. 日中に撮影地の目途を付けておく
2-2. 予報で可能性をチェック
2-3. 時間帯
2-4. 外での待ち方
3. 寒冷地の防寒対策
4. カメラ機材編
4-1. ボディ
4-2. レンズ
4-3. その他機材
4-4. コンパクトデジカメ/旧い世代のカメラをお使いの方の電池対策
4-5. 撮影後
5. 撮影の設定編
EX. カンゲルルススアークについて
EX1. カンゲルルススアークの撮影地
EX2. 宿
EX3、現地ツアー
EX4. 天気予報
EX5. 他の街
EX6. エアグリーンランド
0. 概論
大前提は晴天であることと太陽活動が強いこと。
そしてオーロラが見られる可能性のある日に外でオーロラが出るまで待てること。です。
そのための基本指針として、
・なるべく晴天率の高い地域を選び、
・一日でも長く滞在し、
・外で長時間待っても平気なように重装備をすること
・一日でも長く滞在し、
・外で長時間待っても平気なように重装備をすること
が重要になってきます。
1. 撮影地/時期選び
まずは撮影地と時期選びから。
太陽活動が活発かつ晴れていることで美しいオーロラを見ることができます。オーロラに焦点を当てるのであれば、晴天率最優先で場所を選ぶべきです。
1-1. 撮影国
オーロラオーバルにかかる国の中で晴天率が高い場所を選ぶのが基本です。
具体的には北緯67度線と呼ばれる緯度付近が一番オーロラの発生率が高いです。日本から一回乗り換え以内に行ける中で具体的な知名を挙げるとイエローナイフ(北緯63度)、フェアバンクス(北緯65度)、カンゲルルススアーク(北緯67度)など。
ただし注意が必要なのがこの北緯67度線というのは簡易的な指標であり、実際には地磁気極点を中心としたオーロラオーバルの直下であることが重要です。この地磁気極点は、北極点とは一致しないのです。
下の図ご覧いただけるとわかりますが、カンゲルルススアークはオーロラベルトの直下ではありません。しかし、このオーロラオーバルは太陽活動の盛んな日には幅が広がり、カンゲルルススアークにもかかります。
また、これを見る北過ぎると確率が下がることがわかります。例えば人類が定住する最北の地スヴァールヴァルやグリーンランド最北の村カナックではやや北過ぎてしまいます。(あまり行く人も居ないと思いますが)
具体的には北緯67度線と呼ばれる緯度付近が一番オーロラの発生率が高いです。日本から一回乗り換え以内に行ける中で具体的な知名を挙げるとイエローナイフ(北緯63度)、フェアバンクス(北緯65度)、カンゲルルススアーク(北緯67度)など。
ただし注意が必要なのがこの北緯67度線というのは簡易的な指標であり、実際には地磁気極点を中心としたオーロラオーバルの直下であることが重要です。この地磁気極点は、北極点とは一致しないのです。
下の図ご覧いただけるとわかりますが、カンゲルルススアークはオーロラベルトの直下ではありません。しかし、このオーロラオーバルは太陽活動の盛んな日には幅が広がり、カンゲルルススアークにもかかります。
また、これを見る北過ぎると確率が下がることがわかります。例えば人類が定住する最北の地スヴァールヴァルやグリーンランド最北の村カナックではやや北過ぎてしまいます。(あまり行く人も居ないと思いますが)
© オーロラホームページ - オーロラウォッチングガイド
情報通信研究機構及び名古屋市科学館
http://salmon.nict.go.jp/aurora/guide.html
http://salmon.nict.go.jp/aurora/guide.html
今回は北欧で屈指の晴天率を誇るグリーンランドのカンゲルルススアークを選びましたが、結果大正解でした。カンゲルルススアーク自体はオーロラベルトの直下ではありませんが、いくらオーロラが輝いていても曇っていては見られません。
実際、滞在中のオーロラストーム&翌日のアクティブ日の天気をチェ ックしましたが、他のスカンジナビアカントリー(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー)とアイスランドはすべて曇りだったのです。
実際、滞在中のオーロラストーム&翌日のアクティブ日の天気をチェ ックしましたが、他のスカンジナビアカントリー(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー)とアイスランドはすべて曇りだったのです。
そもそもオーロラストームなんてそうそう来るものではありません(27日周期と言われています)。曇りが続く冬期に北欧でデカいのが見られる旅行者はめちゃくちゃラッキーなのではないかと思います。
長期間滞在するプロや現地人ならともかく、一週間しか期間の無い一般旅行客が強いオーロラを見ようと思うなら、晴天率最優先で選ぶべきです。
1-2. 季節
暗い時間であれば見える可能性があるので、少しでも夜が長い時期が良いです。鑑賞の可/不可だけでいうと、グリーンランドは4月上旬までがシーズンとのことでした。また 、10~12月は、晴天率の高いカンゲルルススアークにして曇りの日が増えるとのことでした。
季節による天候の傾向については、過去の記録をWeatherSparkというサイトで調べていました。
WeatherSpark: https://weatherspark.com/
1-3. 月の有無
星景写真では月を避けるのが鉄則ですが、強力なオーロラは月よりも明るいので、オーロラ撮影において月を無理に避ける必要はありません。勿論月がない方がより良く映りますが、月はあったらあったで
・道中歩きやすい、
・カメラの操作がしやすい、
・オートフォーカスにしての無限遠ピント合わせに使える、
などのメリットがあります。月齢はWeatherSparkでも見られますが、日本語のサイトをご紹介いたします。
月例カレンダー:http://koyomi8.com/moonage.htm
1-4. ツアーか個人か
これはそれぞれメリットデメリットあると思いますが、個人の方が断然自由度が高いです。カンゲルルススアークは徒歩15分で街灯の影響が極めて少なく、かつ作品作りにも 適した美しい地形にあたることが出来ました。
現地ツアーについては、地域によって当たり外れがあるように思います。言い換えると、観光客向けのツアーが洗練されているかどうかがポイントです。例えば、アイスラン ドのツアーはオーロラが見られなければ翌日に振替をやってくれるそうですが、カンゲルルススアークのツアーは曇天の場合こそ振替となりますが、晴天で決行された場合は例え見られなかったとしてももう終わりです。
カンゲルルススアークでのオーロラツアーは、たまたま同い年だったデンマーク人の運ちゃんと2人で語り合いながらの2時間ド ライブは趣深いものがありましたが、オーロラを見ることに焦点を当てるのであれば個人で歩いて行くべきだと思いました。
カンゲルルススアークでのオーロラツアーは、たまたま同い年だったデンマーク人の運ちゃんと2人で語り合いながらの2時間ド ライブは趣深いものがありましたが、オーロラを見ることに焦点を当てるのであれば個人で歩いて行くべきだと思いました。
あとはレンタカーできる地域であれば、車で撮影スポットまで行き社内で暖をとりながら待機、ということも可能です。例えばFlickerでアイスランドの作例を参照しました が、およそ個人でレンタカーでないと行けないような場所で撮られた写真を多く見かけました。カンゲルルススアークはレンタカーそのものがありませんでした。
2. 撮影地での過ごし方編
オーロラストームの時に外で待機していられるかがポイントです。
2-1. 日中に撮影地の目途を付けておく
明るいうちに近所を散策して撮影地を見つけておくと良いです。
2-2. 予報で可能性をチェック
Astronomy Northで太陽活動の強さをチェックしていました。
滞在中の地域がどの時間に当たりそうかはNOAAでチェックします。
グリーンランドでバコーンと大きなオーロラが見られた日は5.5/10.0、”Active” でした。ただし、当然ながら天気と太陽活動は全く関係がありません。その前日、 6.5/10.0、”Storm”の日は一晩中曇っていました。
その他、Moderateの日でも弱いものは見られましたが、やはり弱かったです。5泊滞在して、戦績は以下の通り。
その他、Moderateの日でも弱いものは見られましたが、やはり弱かったです。5泊滞在して、戦績は以下の通り。
Day1. Moderate 3.5/10. 晴天 …微弱
Day2. Moderate 3.5/10. 晴天 …微弱
Day3. Moderate 4.0/10. 全天の100%曇天 …×
Day4. ACTIVE (Possible G2 Storm) 6.5/10. 全天の100%曇天 …×
Day5. ACTIVE 5.5/10. 晴天(全天の30%程度曇天) …強力
Astronomy North:http://astronomynorth.com/aurora-forecast/
2-3. 時間帯
グリーンランドでは21:00-26:00がベストと宿のスタッフに言われましたが、実際に大きなものを見たのは20時頃でした。暗ければいつでもオーロラに会える可能性があるというこ とです。
2-4. 外での待ち方
オーロラは急に育ち、あっという間に動いていくので、室内から「あ、見えた」と思ってから外に出ているようでは撮影に間に合わない恐れがあります。ということで基本的には外で待機していることになります。
どれだけ粘れるかが勝負になるので、しっかりと防寒対策をして外で長時間過ごせるようにしましょう。服装については3の寒冷対策をご参照ください。
3. 寒冷地の防寒対策
末梢を冷やさないのがポイントです。足先と指先、耳と鼻から冷えていきます。
・手はカメラ操作時用の薄手のものの上からグローブをはめて二重にしていました。-30℃の中素手でカメラに触れるとひどい凍傷になる恐れがあるので、かならず手袋の上か ら操作する必要があります。
・靴については今回現地でソレルのブーツをレンタルしましたがこれは良かったです。一日およそ1.000円でした。靴下に貼るホッカイロと合わせて足元は万全でした。
・耳は帽子の上からダウンのフード。鼻と口はヘッドバンドをマスク代わりに使って保護。顔は露出を少しでも減らすのがポイントです。
・末梢さえしっかりしておけば、体は意外と平気です。普通にダウンを買っていけばいいと思います。あとは心臓の位置に貼るホッカイロをしておくことで、温まった血液が体 に供給されます。
具体的には以下のものがあると良いでしょう。-30~35℃を想定。
・ソレルのブーツ(オーロラを売りにしている観光地ではレンタルしている場所があるはずです)
・薄手の手袋
・厚手のグローブ
・ダウンジャケット
・マフラー若しくはヘッドバンド
・耳あて付きの帽子
・貼るホッカイロ
・貼るホッカイロ靴下
・ホッカイロ(ポケットに入れておき手を温める)
4. カメラ機材編
コンデジやスマホですら映るので、究極的には「機材はなんでもいい」です。が、一眼レフを使用する前提で書きます。
4-1. ボディ
寒冷地では電池の減りが早くなりますが、あるグレード・世代を超えるとそんなに神経質にならなくても良さそうです。
今回の撮影に用いたのはD3Sという2009年発売の機種ですが、-30℃下で40枚ほど撮影して減りは15%程度でした。撮影時間は1時間程度でした。さすが当時のフラッグシップで す。
また知人でD7000を使用して-40℃下でのオーロラ撮影をした人が居ますが、撮影中に電池が切れて困ったことはないとのことでした。
ただ、ネットで記事を集めていたところ、それ以前の世代(D90以前)、またそれ以下のグレード(D5000番代)だと減りが早く、撮影時間が交換ばかりになってしまった、という 話も見ましたので、D300S/EOS 7D以前の世代、またD5000番台以下/EOS Kiss級のエントリークラスのボディをお使いの方は対策が必要です(4-4参照)。
4-2. レンズ
なるべく広角のものかつズームが望ましいです。24mm単焦点ではオーロラが収まり切りませんでした。また現地でレンズを交換している余裕はあまりないので(寒冷地での素早い作業には慣れが必要)、やはりズームが良いです。
画質的に理想を言うとNikonのフルサイズボディ+14-24 f2.8になると思いますが、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VRでも十分に撮影できました。ビームが降っているようなオ ーロラを撮影するにはシャッタースピードは10秒以下が望ましいですが(谷角靖さんの作例はSS=6となっていました)、f=4でもISOを上げて十分に対応可能です。APS-C + 10-24でも問題なく撮影できるでしょう。
今回は色々試そうと思って24mm単焦点と16mmフィッシュアイも持って行きましたが、単焦点はやはりシャッタースピードを稼げるので、フルサイズの方は24mmや20mm単焦点を 検討されても良いと思います。
天体撮影では定番のフィッシュアイですが、Capture NXで歪み補正をかければ、16mm f2.8単焦点としても使えます。
4-3. その他機材
三脚は必須です。リモコンもあった方がいいです。
リモコンはサードパーティー製のものでしたがちゃんと-30度下でも動作しました。
三脚は愛用のジッツォのトラベラー四段を持って行きましたが十分でした。天を煽る形になるので高さはあまり関係ないです。安定性重視で一番下の足は延ばさずにおきました。
あとは自由雲台のものが望ましいです。撮影時に自由が利きます。
4-4. コンパクトデジカメ/旧い世代のカメラをお使いの方の電池対策
電池の消耗を防ぐため、・予備の電池は胸ポケットに入れて温めておく、・カメラは撮影まで保冷バッグに入れておく、という対策をしておきましょう。
4-5. 撮影後
そのまま部屋に持ち込むと結露してしまうので、カメラをビニール袋(ジップロックが便利) に入れてから部屋に入ります。
5. 撮影の設定編
5. 撮影の設定編
緑色のものと、オーロラストームの日に混ざる赤色や紫色のものは撮り方の勝手が少し違うようです。以下緑色のもの想定です。
シャッター時間はあまり長くしない方がいいです。長くし過ぎるとオーロラの輪郭がぼやけてしまうのです。最長でも10秒~15秒程度にしておくとビームの筋が映るしょう。
ピントは無限遠に合わせます。絞りは開放でOKですが、単焦点で絞る余裕がある場合は2/3段程度絞るとよいです。
Stormの日に出る赤色や紫色のものは、シャッタースピード最優先にすると良いとイエローナイフ滞在歴半年の知人の談でした。
ホワイトバランスはオートでOKですが、現像の際に低めにすると雰囲気がより出るでしょう。
EX. カンゲルルススアークについて
以上一般論的な話でしたが、せっかくなので滞在したグリーンランドについて。
EX1. カンゲルルススアークの撮影地
以下の場所で撮りました。丘の上。ベンチが目印です。
EX2. 宿
カンゲルルススアークは、冬季には3件の宿がオープンしています。
そのうち紹介した東の丘に近いのはカンゲルルススアークホテルとポーラーロッジです。私はポーラーロッジに5泊しました。
・ポーラーロッジはホステルスタイルの宿で、一泊およそ14.000円でした。キッチンとシャワーは共同ですがキッチンは清潔で食器も充実、オーブンと電気コンロがあります。 シャワーも快適でした。暖かく水圧も強いです。戸17の部屋数に対して4つあるので、待ちもありません。スーパーマーケット徒歩2分なので自炊可能です。暖房はとても利いているので快適でした。朝食も質素ですがついています。Wi-Fiは有料、30分30DKK、60分50DKK、120分90DKKです。高いですがグリーンランドであることを考えると仕方あり ません。
・カンゲルルススアークホテルは空港の建物内にあるので、外を通ることなくアクセスできます。一泊シングルで24.000円程度。シャワーは部屋に入っています。朝食付き。 Wi-Fi有料。カフェテリアとバー、レストランが入っていますが、これは外部の客でも利用可能です。三ツ星ホテルとのこと。
・最後の一件、オールドキャンプは西に2km程行ったところにあります。不便ですが一番安く、また街のはずれなので少し西に歩けばもう暗がりです。ここが撮影スポットとし て適しているかは未調査です。
EX3. 現地ツアー
一回5.000円程度。上にも書きましたが、オーロラツアーはドライブを楽しむつもりでなければ参加しなくて良いと思います。ただ景色のいいところには連れて行ってくれる ので、オーロラ狙いの方でも太陽活動が盛んかつ晴天の日に催行しているようであれば参加してみるのも良いでしょう。オーロラのレクチャー、グリーンランディックコーヒ ーが楽しめました。
EX4. 天気予報
時たまとんでもない外れ方をします。ひどい日には一日晴天と表示されている中一日曇っていました。ただ、まったく外れるというよりは予報が前後する、というのが正確で す。晴れが続く日があれば、その時期には晴れの日があります。
EX5. 他の街
晴天率が高いのはカンゲルルススアークのみだそうです。イルリサットなどはとても美しい街だそうですが、オーロラを狙うならカンゲルルススアークが一番確率の面で良さ そうです。
また、グリーンランドの各街を結ぶのは飛行機です。フィヨルドと氷床により道路の整備が困難なのだそうです。気軽に行き来できないのもポイントですね。
EX6. エアグリーンランド
航空券は個人でとりました。割引がないので、決めたらさっさととってしまいましょう。