君と見たあの星空を

































あれは俺の10歳の誕生日の事だった。

幼馴染の智くんと雅紀が誕生日祝いをしてくれると言って、智くんの絵の描かれたカードを渡されたのだった。


そのカードには地図が描かれており、場所は俺達がよく遊びに行っていた教会だったんだ。


指定されていた時間は20時。


子供の俺達にとっては遅い時間だったが、きっと俺の誕生日という事でいつも仲良くしてくれている神父さんが特別許可をくれたのだった。



 
そのカードに描かれた地図を見ながら道を進んでいたのだったが、この場所なら近道をした方が早いと思ったのが大きな間違いだったんだ…。




夜という事もあってか何故か俺はいつも行き慣れた道を迷ってしまい、




『どうしよう…?』



暗い夜道途方に暮れていると、



『どうしたの?』


と後ろから声を掛けられて振り返るとそこには…多分高校生くらいの制服姿のお兄さんがいたのだ。


そのお兄さんに事情を話すと、智くんや雅紀の待っている教会に連れて行ってくれる事となり、また迷子になってはいけないと言ってお兄さんは俺の手を繋いでくれて…。







あの頃の俺は背が小さくて年齢より下に見られる事が多かったので、お兄さんもきっとそうだったんだと思う。




道を進んでいる途中、お兄さんのオススメの秘密の場所に立ち寄ったのだった。






 

そこは…見晴らしのよい高台にあり昼間に来たらきっと町を一望出来るんだろうな、などと思いながら町に灯る高台から見える小さな光を眺めていると、





『ほら、見てよ。』


とお兄さんの声がして、



『えっ?どこを?』



と聞き返すとお兄さんは、




『しょおくん、上だよっ。
ほら、見てよ。』




と言いながら上を指差していたので、その方向を見上げると…。







見上げた先には夜空があり…。



その夜空には満天の星が広がり、そこにはとても…とても綺麗な星空が広がっていたのだった…。



『うわぁーっ!!
綺麗っ!!』


と声を上げて言うと、



『ふふふ。
綺麗でしょう?』



とお兄さんは嬉しそうな声でそう言ったのだった。




















『ありがとうございました。』

教会に到着してお兄さんに頭を下げてお礼を言うと、


『ふふふ。
どういたしまして。
…またね。』


お兄さんはニッコリと微笑んでそう言ったのだった。



初めて逢ったにも関わらず〝またね〟と言うお兄さんの言葉を不思議に思い、



『…またね…?』


と聞き返すとお兄さんは、


『きっと、近い未来に逢えると思うから。』


と鼻にかかった甘い声で言うと手をヒラヒラと振り、そのまま走り去って行ったのだった。






別れ際、街灯の光で見えたそのお兄さんの姿は、目鼻立ちがハッキリとしてとても綺麗な人だったんだ。




こんな寒い1月の夜に制服だけでコートもマフラーもなくて薄着で、僕と繋いでいた手はとても冷たくてきっと寒かったんじゃないかな…?





なんだか不思議な人だったな…。







そして〝近い未来〟っていつなんだろう?



と考えていると教会の方から涙目の雅紀と心配した顔をした智くんが、



『翔くーんっ!!』


『翔ちゃーんっ!!』



と俺の名前を呼びながら走り寄ってきたのだった。




『翔くんっ!!
なかなか来ないから心配してたんだ。』



『翔ちゃんーーーっ!!
無事でよかったっ!!』




2人に心配をかけた10歳の誕生日の出来事だったんだ。












あれから月日は経ち、俺は高校生となったのだった。




10歳の誕生日の日に俺を助けてくれたお兄さんと同じくらいの歳になったのかな…?























「翔ちゃん、翔ちゃん、翔ちゃーんっ!!
僕とさとちゃんと翔ちゃん、同じクラスだったよっ!!
1年A組だったよーっ!!」



「えー。
雅紀が一緒のクラスか…。」



「まーくんが一緒だと何か起こるか分からないからこえーよなー。」


肩を落としながら智くんとそう言うと雅紀は、


「さとちゃんっ!!
翔ちゃんっ!!
酷いよーっ!!」


と言いながら俺に抱きついてきたのだった。



「もう、雅紀暑苦しいよっ!!」


ふざけながらそう言い雅紀を押し返し、横にひょいっと避けると…。






ドンッ!!



と、誰かにぶつかったのと同時にドスンッと倒れる音と、


「痛っ!!」

と言う声が聞こえたのだった。





「あ…ごめん、大丈夫?」



ぶつかって倒れている相手に声を掛けるのと同時に、


「邪魔っ!!」



と不機嫌な声と共にその声の主の手でグイッと押し退けられたのだった。





「潤くんっ!!
大丈夫っ!?
怪我はないっ!?」




廊下に尻もちをついている〝潤くん〟とやらの横にしゃがみ込んでそう言うと、クルリと振り返りこちらを見ると、




「お前、ちゃんと前を見て歩けよっ!!
危ないだろうっ!!」



色白で可愛らしい顔をしたその人は俺の事をキッと睨みつけるとそう言い、



「潤くん、本当に大丈夫?
保健室に行こうか?」


俺に対する態度とは打って変わって廊下に尻もちをついたままの状態の〝潤くん〟とやらには優しい声でそう言ったのだった。







「ふふふ。
かーず、大袈裟だよ。
僕は大丈夫だよ。」


鼻にかかった甘い声で潤は和と呼んだ人物にニッコリと微笑みながらそう言ったのだった。






廊下に尻もちをついたまま座っている潤に、


「本当に大丈夫?
ごめんね。」



と腰をかがめながらそう言うと、潤は俺に対しても、


「大丈夫だよ。
僕もちゃんと前を見ていなかったのが悪かったんだし。」



とニッコリと微笑んでそう言ったのだった。



その笑顔はとても可愛くて…しかも潤の顔立ちは色白で目鼻立ちがハッキリとした綺麗で…。









綺麗な…子だな…。




思わず見惚れていると和が、



「大丈夫な訳ないだろうっ!!
潤くんは優しいからそう言っているだけだからっ!!」



と俺に向かってそう言ってきたのだった。





潤はニコニコとしながら和の肩をポンポンと叩くと、



「和、そんなに怒んないでよ。
僕、本当に大丈夫だから。」


と和に向かってそう言ったかと思うと急に肩をすくめて怯えた顔をして、


「それに…。
怒ってる和は怖いよー。」


潤がそう言うと和は、



「ちょっと…。
潤くん…そんな事言わないでよーっ!!」


和は俺を睨んでいた怖い顔から困った顔になり、潤はそれを見てケラケラと楽しそうに笑っていたのだった。






「ごめんね。
僕達もふざけて歩いていたから、今度からは気をつけるよ。
ほら、立てる?」



俺達のやり取りを見ていた雅紀がそう言いながら潤に手を差し出すと、






「うん、大丈夫だよ。
ありがとう。」



と潤は微笑みながら雅紀の手を取り立ち上がると、


「悪かったな。
あ、制服汚れてしまったな。」



と智くんがふんわりとした声でそう言いながら潤の制服についた埃を払ってやると潤は、


「ふふふ。
ありがとう。」



と言い、和の方を見ると、



「和。
ほら、僕は大丈夫だよ。」



と楽しそうにクルクルと回って和にそう言うと和は慌てて、



「潤くんっ!!
もう分かったから、無理はしないでっ!!」


とクルクルと回る潤を急いで止めていたのだった。





和は俺達をキッと睨み、



「潤くん、行こう。」



と言い潤の手を引いてその場を離れて行こうとしたその時、潤が振り返って、




「またね。」


と手をヒラヒラと振って俺達にそう言ったのだった。





『またね。』


と言う潤の声と手をヒラヒラと振る仕草を見て…その光景を何処かで見た事がある様な気がして、



「待ってっ!!」


と言いながら潤と和を追いかけ、



「ねえ…。
君…俺と何処かで逢った事ない…?」


と言いながら潤の腕をグイッと掴むと、潤は大きな瞳を更に大きく見開いて驚いた顔して俺を見つめたのだった。







暫く見つめ合い…。




しまったっ!!


俺、変なこと口走ってるよな…?


と思っていると…。







「ふふふっ。
これって…。
何だかさ、ナンパみたいだね。」


潤はクスリと笑い、  



「和っ!!
僕、ナンパされちゃったよーっ!!」


と楽しそうに和にそう言うと、和は俺と潤の間に入りグイッと俺の手から潤の腕を離すと、


「お前ふざけるなよっ!!
潤くん、行こう。
こんな変なヤツに関わっちゃダメだよ。」




と言い残すと潤の手を引いてその場を去って行ったのだった。







潤はそっと振り返り和にバレないように手をヒラヒラと振りながらニッコリと微笑むと、



ま•た•ね



と口を動かすとクルリと前に向き直したのだった。








それが俺と潤の出逢いだったんだ。














⭐⭐ to becontinued⭐⭐



 














皆さま、こんばんは半月

お久しぶりのRONTA です。


翔くんのお誕生日に…と少しお話を書きかけて結局間に合わなかったのでそのまま眠らせようかな…?と思っていたのですが…。


本日、2月5日は翔潤の日なのでまたもや新しいお話を始めてしまいました…。


そんなに長くならないと思いますので、少しばかりお付き合いいただけると嬉しいですニコニコキラキラ