アンティークショップ~紫の石~
「ん〜っ!!
美味しいっ!!」
と言いながらスコーンにたっぷりとストロベリージャムとクロテッドクリームを塗り美味しそうに頬張る潤を微笑ましく思いながら見つめていると、
「翔ちゃん。
潤くんに見惚れていないで、翔ちゃんも食べなよ。」
とカズに言われたので、
「べ、別に潤に見惚れている訳じゃあ…。」
と慌ててそう言い、目の前にあるケーキスタンドの1段目にあるサンドイッチを手に取り口に運んだ。
たまごサンドにきゅうりが挟まれていて、シンプルなたまごサンドの味なんだけどほんのり辛味があり、
「んまっ!!
カズ、これマヨネーズで味付けしただけ?」
と聞くと、
「ああ…。
それは確か隠し味にフレンチマスタードを入れていた様な…。」
と答えた。
「へぇー。
ほんのりマスタードの辛さがあってうまいわっ!!」
と言いながらたまごサンドを頬張り、大皿に置かれているフィッシュ&チップスをフォークで取り口に運ぶと、揚げたてほやほやの熱々でこれた美味しくて、
「んまっ!!」
と言いながら次々と料理を堪能していったのだった。
アンティークショップ 〜紫の石〜 ⑮
「あっ!!
あつっ!!あつっ!!」
と言う潤の声が聞こえたかと思うと、
「ん〜カズくん。
コレ、美味しいっ!!」
と潤がいつの間にやらコロッケを食べていた。
「えっ!?
そんなのあったの?」
と言いながらフィッシュ&チップスかのせられた大皿を見るが潤の食べているコロッケは見当たらず、
「潤、それどうしたの?」
と聞くと潤が、
「カズくんがくれたんです。」
とコロッケがのせられた紫の薔薇の描かれた皿を見せてくれながら潤は俺にそう教えてくれた。
「えー。
俺もそれ食べーたーいっ!!」
と言うとカズが、
「翔ちゃん…。
コレは潤くんだけの特別なモノだからダメですよっ!!」
と言い、
「ほら、ジュンくん。
全部食べてもいいんだよ。」
と潤の持っているコロッケの皿を潤の目の前に置き直すとそう言った。
「ズールーいー。」
とわざと拗ねた声でそう言うと、そんな俺を見た潤が、
「ふふふ。
しょおさん、どうぞ。」
とコロッケがのせられた皿を俺に差し出してくれた。
「あ、ちょっとっ!?
ジュンくんっ!?」
とカズが慌ててそう言うがちゃっかりと皿を受け取り、
「潤、ありがとうっ!!」
と言いコロッケを1ついただく事にしたのだった。
それを見たカズが、
「全く…ジュンくんは本当に優しい子だよね…。」
と言い潤の頭を撫でてやると潤はふふふと可愛く微笑んでいた。
そんな潤をカズは優しい眼差しで見守っていたかと思うと、ジトッ鋭い目つきで俺を睨むと、
「それに比べて翔ちゃん…。
貴方食いしん坊すぎますよ…。」
と呆れた顔でそう言われてしまったのだった。
「おっしゃる通り…。
俺、食べる事が大好きだからなー。」
と言うとカズは、
「そんなの知っていますよ。」
と言いながら甘いバニラとほんのりバラの花の香りのする紅茶が入れられたティーカップに口をつけた。
えっ!?
何でカズが知ってるんだ?
と思いながら口に運んだコロッケは…。
中から熱いクリームがとろけ出してきて、クリームコロッケ…?あ…これは…、
「カニクリームコロッケ?
うっまっ!!」
と言うと、カズが紅茶を飲みながら、
「そう、カニクリームコロッケ。
ジュンくんの大好物なんだよ。」
と言い、
「ねっ。」
と潤に言うと潤は、
「カニクリームコロッケ…?」
と首を傾げた。
それを見たカズは、
「そう。
カニクリームコロッケっていうんだよ。」
と潤にそう言うと潤は、
「カニクリームコロッケッ!!
美味しいっ!!」
と美味しそうにカニクリームコロッケを頬張ったのだった。
ってか何で潤の大好物なのに潤は『カニクリームコロッケ?』って疑問系でカズに聞くんだ…?
と不思議に思いつつ、美味しそうにカニクリームコロッケを頬張る可愛い潤の姿を見つめていると…。
潤の口の端にクリームコロッケのクリームがほんの少しついていたので、
「潤。
ここにクリームがついているよ。」
と言いがら自分の口元を右手の人差し指でトントンと叩いて潤に知らせると潤は、
「ん?
ここ?」
と言いクリームのついている方とは逆の口元を手で拭っていたので、
「違うよ。
反対だよ。」
と教えてあげると、
「ジュンくん、見せて。」
と言いカズが潤の顔を自分の方に向かせると、カズは膝にかけていた白いナプキンでクイクイッと、潤の口元についていたクリームを拭ってやり、
「はい。
これで取れたよ。」
とニッコリと笑って潤に言い、チラリと俺の方を見て、
「翔ちゃんって、目がいいんだね。」
と言ってきたのだった。
「えっ?そう?」
と言うと、
「ええ。
だって潤くんの口元についていたクリームって、ほんのちょっとでしたよね。
翔ちゃんの目はよく見えんですね。」
とカズがそう言ったので、
「ああ。
子供の頃から目がいいみたいでよく見えるんだよな。」
と言うと、カズは水分を含み潤んだ琥珀色の瞳でジッと俺の顔を見つめながら、
「そうなんだ…。
よく見える目なんだね。」
と言った後、パッと表情が変わり笑顔で
「そうだ。
紅茶のおかわりはどう?」
《のおかげ…だね…。》
と言ったのだが、『紅茶のおかわりはどう?』と言ったカズの言葉と共に…別の内容の言葉を話すカズの声が聞こえてきた様な気がしたんだ…。
でも、何て言ったのかサッパリ分からず、
「カズ…。
今、何て言った?
上手く聞き取れなくて。」
と聞き返すと、
「えっ?
『紅茶のおかわりはいかが?』って言ったんですよ。」
とカズはニッコリと微笑みながらそう答えたが…それとは別に何かカズが呟いた声が聞こえた様な気がするのだが…気のせいだったのか?
と思い、
「それ以外も何か言ったよな?」
とカズに確認をすると、カズは不思議そうな顔をして、
「言ってませんよ。
ねー、潤くん。」
とカズは潤に同意を求めると、潤も、
「うん。
カズくん、『紅茶のおかわりはどう?』以外は言ってないです。」
と答えた。
潤が嘘をつくとは思えず、首を傾げて考えているとカズは、
「翔ちゃん、大丈夫?
貴方、仕事のしすぎなんじゃないの?」
と笑いながらそう言い、潤はそんな俺を紫色の綺麗な瞳で心配そうに、
「しょおさん…。
お仕事大変なんですか?」
と言いながら見つめてきたので、
「そんな事ないよ。
大丈夫だよ、潤。」
と言い、耳を触りながらおどけた様子で、
「何か耳の調子が悪かったのかもしれないなー。」
と、潤に心配をかけまいと思い、
「ハハハハハッ。」
と笑いながらそう言って誤魔化したのだった。
「しょおさん、お仕事大変じゃないのならよかったです。」
と潤はホッと安心した顔をするとニッコリと微笑んだのだった。
アンティークショップ 〜紫の石〜 ⑮
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