アンティークショップ~紫の石~



















 















「櫻井さん。
最近良い事あったんですか?」


隣の席の後輩に突然そう言われて、


「えっ!?
別に何も?」


と答えると、



「ええー!?
そうなんですか?」


と言われた。





「何でそう思うんだよ?」


と聞くと、


「あー。
櫻井さん何か最近やたらと顔がニヤついていて…。
ちょっと気持ちが悪いレベルなので…。」



とニヤニヤとしながらそう言ってきたのだった。



「はぁっ!?
お前、気持ちが悪いって…。
お前言い方っ!!」


と軽くグーパンチで後輩の肩を叩くと、後輩は大袈裟によろめいていた。


 


「ああ、スミマセン…。」

と謝ってきたのだが、


「…でも…。
顔が緩みっぱなしですよ。」


尚もニヤニヤとしながらそう言われて、



「えっ!?
そんな事はないさ。」


と言いながら顔を触りながら、潤の顔を思い浮かべていたのだった。






ウチに居る妖精に癒されてるんだ。


と言いたい所だが、そんな事…口が裂けても言えないので、


「ああ。
だとしたら…ペットの鳥に癒されているからかな?

ウチの子本当に可愛いんだよ!!」


と言うと後輩は遠い目をしながら…。




「ああ…。
例の…櫻井さんに餌を貰えなくて、ひもじい思いをしていた子ですね…。」


「ああ…。
櫻井さん家のペットになんかなって可哀想…。」


とポツリと呟いたのだった。



「お前ホント一言多いよなっ!!」

と言うと、


「ハハハッ。
でも無事に育っているんですね。」

と笑いながらそう言ってきたので、



「すくすくと育ってるぞっ!!」


と自慢げに言うと、



「餌をちゃんと貰えているんですね。
よかった。」


とホッとしながらそう言ってきたので…。







どちらかというと俺が潤に飯を食べさせて貰ってるよな…?

と思い、



「あげてると言うより食べさせて貰ってるかな…?」


と思わずそう言ってしまうと、


「えっ!?
櫻井さん、鳥の餌奪って食べているんですかっ!?」


と後輩は目を大きく見開き驚いて聞いてきたのだった。




「そんな訳ないだろうっ!?」


と突っ込むと、


「何か色々心配なのですね…。」



と後輩は冷ややかな目で俺を見つめていたのだった…。





















 アンティークショップ〜紫の石〜 ⑪



















そんなこんなで土曜日になり…。




「じゅーん。
そろそろ出かけるぞー。」



と声を掛けると潤はベランダを楽しそうに眺めていた。



「じゅーん。
何見てるんだ?」


と聞くと、潤は右手の人差し指を自分の唇の当て、


「しょおさん。
しーーーっ!!ですっ!!」



と小声でそう言うとベランダを指差したのだった。



潤の指差した方を見ると…。


ベランダには会社の後輩がくれた鳥の餌を入れた皿が置いてあり、そこにスズメが集まって餌を食べていたのだった。



後輩が潤の為(後輩には鳥と言っているので)
と言って、


『櫻井さん。
コレよかったら櫻井さん家の小鳥に食べさせてあげてください。
俺…やっぱり櫻井さん家の小鳥が色々心配でで。


殻なしの餌なので、餌箱吹いて殻を飛ばさなくても大丈夫なやつですからっ!!』


と鳥の餌の餌をくれたのだが、実際にはウチに小鳥なんか居ないので困っていたのだが、潤が小皿に入れてベランダに置き鳥が遊びに来るのを楽しみにする様になり、毎日楽しそうに見ているので後日後輩に、


『ウチの鳥が喜んでいるよ。
ありがとう。』

とお礼を言ったのだった。
(その後、後輩は定期的に鳥の餌を持ってくる様になってしまっただが…。)








「潤。
帰ってきてからまた見ような。
ほら、出かけるぞ。」



と潤に声を掛けると、コクンッと頷き潤は立ち上がると、


「さっきカズくんには今日遊びに行く事を伝えましたっ!!」


と嬉しそうにそう言うので、


「電話したのか?」



と聞くと潤は、ふふふ…と笑うと、


「それは内緒です。」


と悪戯っ子の様に笑い、


「僕、しょおさんとのお出かけするのを楽しみにしていたんですっ!!」


と紫色の綺麗な瞳をキラキラと輝かせながらそう言うと、俺の手を引いて玄関へと向かったのだった。













ファッションビルの立ち並ぶ街にやって来て、潤に必要な服や生活雑貨を2人で見て回った。





可愛らしい雑魔の並ぶ店で、



「しょおさんっ!!
コレ可愛いっ!!」


潤が天使の翼の描かれたマグカップを手に取って俺に見せてきた。


「うん。
潤の羽根みたいで可愛いな。」


と言うと潤は、

「僕の羽根みたいですか?」


マグカップを見つめて嬉しそうにそう言った。



そんなに嬉しそうな顔をされたら、


「じゃあ、それも買おうな。」


と言うしかないよな…?






すると潤は棚からもう1つマグカップを手に取り、



「コレ…色違いでしょおさんと一緒に使いたいですっ!!」


と赤と紫のマグカップを両手に持ちそう言うので、


「じゃあ、お揃いで使おうな。
貸して、買ってくるよ。」


と言いマグカップを潤から受け取ると、レジへと向かったのだ。




せっかくなのでプレゼント用にラッピングをしてもらい、マグカップの入った紙袋を潤に渡すと潤は紙袋の中を覗き込み、


「わあーっ!!
リボンがついてて可愛いですっ!!」


と大喜びをしてくれたのだった。








ある程度の買い物も終わり、


「さて。
カズの所へ行こうか?」


と言うと潤は、


「カズくんに逢えるの楽しみですっ!!」


とピョコン、ピョコンと跳ねて喜んでくれたのだが…。



そんな潤を見て俺は何だか複雑な気持ちで…。



こんなにカズに逢えると喜ぶ潤に早くカズに逢わせてやりたいと思う俺と…。


カズに逢えると喜ぶ潤に対して面白くない気持ちになっている俺もいたのだった…。




















 アンティークショップ〜紫の石〜 ⑪
⭐⭐to becontinued⭐⭐














いつもお話をよんでくださって、ありがとうございます照れ


昨日の地震のあった地域にお住まいの方は大丈夫でしたでしょうか?

大きな揺れだったみたいなのですが、何事もなかった事を祈りますキラキラ