空の色
































放課後…。



部活のサッカーの練習をする為にグランドに出た。





晴れた日の放課後のグランドは日差しが強く暑くて、そんな中フワリと吹いた風が心地よくて、


「はぁー。
気持ちいいなー。」



そう呟き、空を見上げた。




青く澄み渡った空がどこまでも続いており、所々に白い雲が少しずつ形を変えながら浮かんでいて、




青くて綺麗な空だなー。




なんて呑気な事を思いながら、足を止めて空を見つめていると、




「櫻井ーっ!!
早く来いーっ!!」



とサッカー部の部長の本田(ホンダ)先輩が、俺を呼ぶ声が聞こえた。





「はーい。
すぐに行きまーすっ!!」


と応えると、すぐに呼ばれた方へと走って行った。





















空の色  ②




















「すみません、お待たせしましたっ!!」



と言い、サッカー部員の集まっている輪の中へ入ると、




「櫻井くーんっ!!櫻井くーんっ!!
櫻井翔くーんっ!!居ますかーっ!?」


と校舎の方から叫びながら、走ってやって来る人物がいた。



「櫻井くーんっ!!」


と言いながら走ってくる人物を目を凝らして見ていると…。







あれは…美術部の部長の鈴木(スズキ)先輩…?



美術部の部長の鈴木先輩がグランドをキョロキョロと見渡しながら俺を探していた。





「鈴木先輩ーっ!!
櫻井、ここに居ますよーっ!!」


とグランドから叫ぶと、鈴木先輩は俺の方へと走って来た。






「ハァ、ハァ、ハァ…。
さ、櫻井く…んっ!!
た…大変っ!!大変なんだよっ!!」


息を切らしながら眉毛を下げて困った顔をした鈴木先輩がそう言った。





いつもニコニコとしているこの人がこんな顔をしているという事は、余程な事があったんだな…。


と思い、


「鈴木先輩、どうしたんですか?」


と聞くと鈴木先輩は、



「美術室に人だかりが出来てしまって、大変な事になっているんだよ…。
帰るように言っても皆んな帰ってくれなくて…。

それで大野くんが『翔くんを呼んできてください。』って言うから櫻井くんを呼びに来たんだ。」


と言った。






「智くんが?」

と聞くと、


「うん、そうなんだ。」

うんうん、と頷きながら先輩はそう答えた。






「あ…。
また智くんの絵を見る為に、人だかりが出来たんですか?」




過去にも智くんが絵画コンクールで賞を取り、それを聞きつけた生徒達が智くんの絵を一目見ようと集まり、騒動になった事があったので鈴木先輩にそう聞くと、



「あー…。
まあ…。
そんな感じでもあって、それだけではなくて…。



それは…。
美術室に向かいながら説明させて貰ってもいいかな…?」


鈴木先輩はサッカー部の部員達をチラリと見ると、小声でそう言った。






「本田先輩…。
ちょっと美術室まで行ってもいいですか?」


とサッカー部の部長の本田先輩にそう聞くと、


「ああ。
何だか困っているみたいだから、櫻井早く行ってやれっ!!」

と本田先輩が快く承諾してくれた。





「本田くん、ありがとうっ!!」


と鈴木先輩は本田先輩に手をあげてお礼を言うと、


「櫻井くん、早く早くっ!!」



と言い、俺の腕を掴むと校舎の方へと走り始めた。













鈴木先輩と一緒に3階にある美術室へと向かう途中、



「で…。
どうして美術室に人だかりが出来たんですか?」


と聞くと…。




「あー、それね…。
大野くんが今、松潤くんの絵を描き始めたでしょう?


櫻井くんはもう知ってるよね?」

と俺の顔を見つめてそう聞いてきたので、


「ああ…はい。
知っていますよ。
智くんが珍しく人物を描いていますよね。」


と答えた。




「そうそう。
大野くん、松本くんの事がお気に入りみたいで。
ホント、大野くんが人物を描くなんて珍しいよねー。

って、それは置いといて、その大野くんの絵のモデルをしてくれている松潤くんと、松潤くんを描いている大野くんを一目見ようと、噂を聞きつけた生徒達が集まってきちゃったんだよねー。



ウチの部員の口止めをしなくても大丈夫だと思っていたけど、甘かったみたいで…。」



はぁーーーーっ。


と鈴木先輩は深いため息をつきながら説明をしてくれた。







3階に到着し、校舎の一番端にある美術室へと向かうと美術室の前には鈴木先輩が言っていた様に大勢の生徒が集まっていた。








「美術部の部員以外は入らないでくださいっ!!」


「じゃあ、美術部に入ればいいの?」


「そうじゃなくて…。」


「松本くんが見たいんだけど。」

「大野さんの絵が見たいですーっ!!」







と、美術部の部員と他の生徒達が口論をしており…。



えっ!?

ちょっと…待って…。


まさか…。

智くん、これを止めさせる為に俺を呼んだのっ!?



と思い、



「えっと…。
俺…は…この騒ぎを鎮めれば…いいんですか…?」


げんなりとしながら鈴木先輩に聞くと、




「あ…。
いや、こっちはいいから取り敢えず中に入って貰いたいんだよなー。」


と鈴木先輩はそう言うと、


「はーい。
皆んな通してねーっ!!
俺、美術部の部長だから、中に入らせて貰うよーっ!!」


と俺の手を引きながら美術室の中に入ろうとすると、

「キャーッ!!
櫻井くんだっ!!」



「キャーッ!!
櫻井先輩が何でっ!?」



と言う声と共に、



「櫻井くんは美術部じゃないよね?」


と誰かが言う声が聞こえ、


「そうだよっ!!」


「何で櫻井は良くて俺らはダメなんだよっ!!」

「そうだ!!そうだ!!」

と言い始めたので、



「櫻井くんはサッカー部兼、美術部なんだよー。」


と鈴木先輩がニッコリと微笑みながら、柔らかい口調でそう言い、美術室の中に入ろうとするが、


「えーっ!?
嘘だっ!!」


「櫻井くんだけズルいっ!!」

「櫻井だけ贔屓だっ!!」



と言い始めてなかなか美術室の中に入れずにいると…。










「櫻井は美術部の部員だぞーっ!!
はい、皆んな帰った帰ったーっ!!」


と背後から誰かがそう言うのが聞こえて振り向くと、そこには美術部の顧問の山葉(ヤマハ)先生の姿があった。


「ほれっ!!
これ、櫻井の入部届だっ!!」


と山葉先生は手に持った紙をヒラヒラとさせて、美術室に集まってきた生徒にチラつかせながら追い払っていた。





山葉先生はイケメンなんだけど…。


背が高くていかつくて、しかも目力半端なくて…。


そんな目で力いっぱい、

『お前ら早く帰れよ!!』

と無言の圧をかけるもんだから、皆んな文句を言わずにその場を去って行ったのだった。




山葉先生効果、半端ないなーっ!!



ってか、はじめっから山葉先生が来ればこんな騒動にならなかったのでは…?


と思っていると、鈴木先輩が山葉先生に向かって、


「山葉先生ーっ!!
遅いですよっ!!

来てくれて助かりましたけど、でも遅いですっ!!」


と文句を言っていた。




「悪りぃな。
こんな日に限って職員会議があったんだよー。」


と山葉先生は両手を合わせて謝りながらそう言った。





山葉先生の手に握られている紙が気になり、



「先生。
その紙、本当に俺の入部届なんですか?」


と聞くと、



「ああ。コレ?
ホンモノだぞ。
去年、お前に書かせた美術部の入部届だ。

コレ、やっぱ役に立つんだよなーっ!!」


と言うと山葉先生は紙をズイッと俺の目の前に差し出すと、ニヤッと笑った。





美術部の入部届けは山葉先生に言われて、去年智くんが美術部に入部して暫く経ってから、俺も書かされていたんだ。


『櫻井、お前大野と一緒に帰ってんだよな?
だったら美術部にも入部しとけ。
何かあった時に役立つぞー!!』


と言われて半信半疑で書いたのだが…。


去年、智くんが絵画コンクールで賞を取った時もこんな騒動が起こって、その時も智くんを迎えに来た時に入部届けがあるので美術室に入れて貰えたりしているので、結構役立っているんだよな…。


山葉先生の判断力に関心していると、



「あっ!!
それよりも櫻井くん、早くっ!!
早くっ!!」



と鈴木先輩に手を引かれて美術室の中に入ると…。











美術室の奥にある美術準備室の前で智くんが、


「松潤ー。出てきてくれよぉー。」


「まつじゅーんっ!!
お願いだから開けてくれよぉーっ!!」



と言いながら、


ドンドンッ!!


と扉を叩いていた。


「智くんっ!?
どうしたの…?」

と智くんに近付きながらそう聞くと、俺の声に気付いた智くんが振り向くと、



「翔くーん。ダメだ…。」

とションボリとしながら智くんが言った。





「えっ!?何っ!?何っ!?何があったのっ!?
何がダメなの…?
智くん、大丈夫っ!?」


と聞くと、

「翔くん…。
大丈夫じゃないんだ…。
松潤が中に閉じこもって出てきてくれないんだよ…。」


智くんが困り果てた顔をしてそう言った。



「えっ…?
松本くんが…?」


と聞き返すと、智くんはコクンと頷いた。





どうやらこの騒動で、人が集まって来て自分の顔を見られるのが嫌だった松本くんが、美術準備室へ逃げ込んでそのまま中から鍵をかけて閉じこもってしまったらしく…。





「翔くんが呼べばきっと松潤出てきてくれる筈だから。」


と智くんがのんびりとした声でそう言うので、



「俺が呼んでも松本くんは出てきてくれないと思うよ…。」


と言うと智くんは、


「そんな事はないっ!!
お願いだから翔くん、頼むよぉーっ!!」


と俺の両手を掴んでそう言った。





いやいやいや…。


どう考えたって、松本くんのいつもの俺に対するあのツンケンとした態度…、智くんも見ているよね…?


あんなに嫌われているのに、そんな人間が呼んだって出てくる訳がない。


そんな事、智くんも分かっている筈なのに…。



そんな無駄な事をするより、手っ取り早い方法をと思い、


「あっそれよりも、美術準備室の鍵って山葉先生が持っているんだよね?
山葉先生に開けて貰えばいいんじゃないの?」


と言った。





「そりゃあ、ダメだろう?
鍵を開けてやってもいいけど、それって無理矢理松潤をそこから連れ出すんだよな?

それじゃあ松潤が可哀想だろう?
松潤が自分から開けて出てこないと意味が無いんじゃないのか?」



と山葉先生が俺達の後ろからそう言った。



まあ、確かに無理矢理連れ出すのは可哀想だよな…。




と思ったけれど、


「何も俺じゃなくても…。」



どちらかというと俺は松本くんにあまり目も合わせて貰えないし、口も聞いて貰えないし…。


だから、智くんの方が適任だと思う。



と言うと、


「いいや!!
翔くんじゃないとダメなんだよー。」


と智くんがそう言うと、



「俺も大野の意見に1票だな。」


「まあ。
確かにそうですよね。」

と山葉先生や鈴木先輩までそんな事を言うんだ。






「えっ!?
俺っ!?」

と右手の人差し指で自分を指してそう言うと、



「翔くん、お願いだよーっ!!」


と智くんが必死になってそう言ってきた。



智くんがそんなに必死になって頼んでくるもんだから、仕方がないと思い意を決して、




「松本くーん。
もう、大丈夫だよー。
皆んなもう帰ったよーっ!!」


コンコンコンッ!!


と美術準備室の扉を叩いてそう言うけれど、中から松本くんの反応はなく…。



やっぱり俺じゃあダメだよな…。




となで肩をさらにガックリと下げて項垂れていると、山葉先生が、




「さてと。
松潤は櫻井に任せて今日はこれで部活は終了だ。


ほれっ!!
皆んな解散だーっ!!
帰るぞーっ!!」


と言い始めたのだった。



「なっ!?
ちょっと先生っ!?
何勝手な事を言ってるんですかーっ!?」


俺…今日もう帰れないよな…?


と不安いっぱいになりながら山葉先生を見上げると、俺の視線に気付いた先生が悪戯っ子の様にニヤッと笑い、俺の耳元で、



「その方が松潤も出てきやすいからな。」



と囁くと、ウインクをした。



「ほらっ!!
とっとと帰るぞーっ!!」


と言うと山葉先生は、美術部の部員を引き連れて美術室から出て行った。








「えっ?
あっ?
ちょっとっ?」


と戸惑っていると、


「じゃあ、俺も外で待ってるよ。」



と言い智くんまで教室の外へと出て行こうとするので、


「ちょっとっ!!
智くんっ!?
待ってよっ!?」


と智くんの腕を掴むと、智くんは振り向き、



「翔くん、松潤をヨロシクなっ!!」


ふんわりと笑うとそう言うと、そっと俺の掴んだ手を振り解いて美術室から出て行ったのだった。








「え…?
えっ!?
えーーっ!?」


もうこの状況は戸惑うしかないよ…な…?


よりによって…多分…きっと…一番…懐かれていない俺に松本くんが出て来てくれる様に説得する事を託すだなんて…。






「無理だよー…。」


はぁーーーっ。



と深いため息を吐き途方に暮れていると…。






ゆーっくりと、美術準備室の扉が開いたのだった。





えっ!?

どういう事っ!?



と思って開いた扉を呆然と見つめていると、ガチャッという扉の開く音と共に、






「……。
…ゴメンナサイ…。」


と小さな声が聞こえた。


声の方を見ると、目が赤くした松本くんが扉の隙間から顔を覗かせていた。








出て来てくれたんだっ!!


よかったーーっ!!



と思いながら、扉をまた閉められてはいけないので、



「あ…。
松本くん、大丈夫…?」



ガッシリと扉を掴みながら松本くんに声をかけると、松本くんはコクンと頷いた。








その姿が何だか小さな子供の様で…思わず、



ふはっ!!



と吹き出してしまい、そのままそっと松本くんの頭を撫でてやった。




松本くんが驚いた顔をして俺を見つめて来たので、



あ…ヤバい…。


可愛くてつい…。



と思い、



「あ…。
ごめんな…。
俺が頭撫でるの嫌だったよな…?

ごめん…、ごめん…。」



と言いながらパッと松本くんの頭から手を離すと、



「あ…や…。
いや…じゃないです…。
寧ろ嬉しいというか…じゃなくて…えっと…。
なに言ってるんだろう…俺…。」



と手をバタバタとさせてアタフタとする松本くんを見ていると、見た目のクールビューティーなイメージと違いすぎて、


ふはっ!!
ハハハハハッ!!



と笑ってしまうと、松本くんは、



「もう…。
…櫻井先輩は、またそうやって俺の事をバカにして笑う…。」


と言い頬を膨らませて拗ねてしまった。





俺のバカッ!!


また拗ねさせてどうするんだよっ!!



慌ててフォローをしようと、


「あ、いや…。
バカにして笑ったんじゃなくて、笑ったのは松本くんが…。」







『あまりにも可愛いくて…。』



と思わずそう言いそうになったのだが…。


男の松本くんに『可愛い』は褒め言葉にはならないだろうし、きっとまた『バカにしてるっ!!』と拗ねられそうな気もして、




「あっ…いや…。
えーと…。」


と焦りながらどう誤魔化そうかと考えていると、




「ふふふふふ。」



と笑う声が聞こえて松本くんの方を見ると、松本くんは可笑しそうに笑っていた。



急に笑い出した松本くんを不思議に思い、


「えっ…?なに?
なにが可笑しいの?」



と聞くと松本くんは、



「あ…。
櫻井先輩の焦った顔が可愛いな…と思ってしまっ…て…つい…。」



最後ら辺は声が小さくなり、気まずそうに俯きながらそう言った。




「えっ!?はっ!?」


俺が可愛い?

そんな訳なしい、『可愛い』のは俺ではなくて、


「可愛いのは松本くんの方じゃんっ!!」



思わずそう言ってしまい、


しまったっ!!


と思っていると、松本くんは一瞬キョトンとした顔をしたかと思うと、


「…おれが…かわいい…?」


と呟くと、顔を赤らめて、



「お、おれっ!!
か、可愛くなんかないですよっ!!」


と明らかに恥ずかしそうに照れながらそう言った。







照れた顔も可愛いな…。



色白だから顔が赤くなると目立つんだな…。


目鼻立ちがハッキリとして整った顔立ちをしている彼は、近くで見るとやっぱり綺麗だよな。



それに睫毛ながっ!!






あー、泣いていたんだろうな…?


目が赤いし、少し腫れてる…。



と思いながら松本くんの顔を見つめて、


「泣いちゃったのかな…?
目が腫れてしまったね…。 

でも、松本くんはさっきみたいに笑っている方が絶対にいいよ。」


と言うと、松本くんの顔がさらに赤くなり、



「さ、さ、さ、さ、櫻井せんぱい…。
て、て、て。手…。」


と言った。











ん?手?



と思いふと自分の右手を見ると…。



松本くんの泣き腫らしたであろう目元をそっと指先で触れていた。



「あっ!!
ごめんっ!!」





松本くんは綺麗な顔をしているし、泣き腫らした目元が腫れてしまって可哀想にとは思って…はいたんだけど、無意識にその顔に触れてしまっているとは…。



パッと松本くんから手を離し、



「ごめんな…。」



と言うと、松本くんはフルフルと顔を横に振った。



「気にしないでください…。
…大丈夫ですから。
むしろ……ですから…。」


と小さな声でそう言う言葉が聞き取れず、


「えっ!?
今、何て言ったの?」


と聞き返すと、


「……。
何でもないです…。」


と言うから、


「何だよーっ!!
教えてくれたっていいじゃんー。」



と拗ねて言うと、


「ナイショです。」



と言った後、君は俺にニッコリと俺に向かって微笑んでくれたんだ。











花が咲き誇るかの様な綺麗な笑顔で…。






ずっと君のそんな笑顔を見ていたいな…。







なんて俺が思っていた事を、きっと君は気付いていなかっただろうね…。




あの時俺は…。



君がずっとずっと俺の側にいて、こんな風に微笑んでくれればいいのに。





なんて、とてつもなく欲張った事を想っていたんだよ。




















⭐⭐to becontinued⭐⭐













本日、アラフェス2020の発売が発表されしたね〜ラブラブラブ
そして予約も開始しましたねキラキラ
あ〜手元に届くのが楽しみですね〜チュー音譜




そして、お話を読んでくださって、ありがとうございます照れキラキラ

なかなか進まなくてゴメンナサイ…あせる

こんなペースですけど最後まで読んでいただけると嬉しいですドキドキ