深い深い海の…  〜⑧〜  




















湯船の中でユラユラと揺れる…。



赤い…赤い…ソレはとても綺麗だ。



白くて綺麗な翔くんの肌によく似合っていて、美しさがより一層際立っていたのだ。






美し過ぎて幻想的で…。




俺が今見ているモノは夢…なんだろうか…?


それとも現実…?



もうよく分からなくなって暫く目を瞑り、



「ははっ。
飲み過ぎちゃったのかな…?」


と呟くと翔くんの白い腕が伸びてきて、そっと翔くんの手で頬を包まれた。




大きな綺麗な瞳がジッと俺を見つめてきて…。


水分を含んだ髪が顔にかかり、綺麗な顔が少し隠れているのでそっと手を伸ばし、顔が見えるように翔くんの髪をかきあげた。


「翔くんは…可愛くて綺麗だね。




赤くて綺麗で…翔くんによく似合ってるよ…。」





湯船のお湯の中で揺れるソレを撫でながらそう言った。



















上半身はいつもの翔くんなんだけど下半身は魚の様になっていて、それでいて赤くて綺麗な鱗がお湯の中でユラユラと揺れていたのだった…。







「翔くん…の足…。
お魚さんになっちゃったんだね…。」




と呟くと、翔くんは驚いた顔をして俺の顔と自分の足を交互に見比べていた。












暫くボーッと翔くんの綺麗な姿を眺めていたが…。






























トゥーーンッ!!



トゥーーンッ!!







「あぁ痛っい…。」





さっき翔くんに湯船のお湯をかけられたので、身体が冷えてしまいクシャミが出てしまったのだ。







翔くんが驚いた大きな目で俺を見つめてきたので、




「ああ…驚かせてしまってごめんね…。
クシャミが出たんだよ。」


と言うと翔くんは、


なんで?


という顔をしたので、



「さっきお風呂のお湯で濡れてしまったから少し寒くなったみたい…。」



と言うと、翔くんがグイッと俺の手を引いた瞬間…。









「えっ!?
えぇっ!?」







ザバンッ!!




と俺はバランスを崩してそのまま湯船の中に落ちてしまったのだ。




「ちょっとっ!!
翔くんっ!!」



少し怒った声でそう言うと、翔くんは両手を合わせて謝ってきた。



俺の手を取ると手のひらの上に翔くんの人差し指で、



か.ぜ.ひ.い.ち.ゃ.う




と書いて俺をそっと抱きしめてきたのだった。





「ふふふふふ。
そうか…。
ありがとう。」


とお礼を言ったが、服を着たままお風呂に入るのはちょっとな…。



と思い、



「翔くん、一緒にお風呂に入ってもいい?」




と聞くと、翔くんは嬉しそうにコクコクッと頷いてくれたので、



「濡れた服を脱いでくるよ。」



と脱衣所に服を脱ぎに行き、濡れた服を脱ぎそのまま洗濯機の中に放り込むと、バスルームへと戻ったのだった。





大人の男が2人入っても余裕がある広さの浴槽は祖父の自慢のお風呂だったのだ。


温泉好きの祖母の為に浴槽は特別大きく作られているんだ。



その浴槽の中で翔くんは嬉しそうに俺の周りをプカプカと浮いて遊びながら、時折俺の顔を上目遣いでチラチラッと見てきて…。







ああ…翔くんの上目遣いの顔ホント可愛いよね…。



あの大きくて綺麗な瞳で見つめられるとキュンキュンしてしまう…。











暫くそんな可愛い翔くん姿を微笑みながら見ていたのだが、





あ…そろそろ身体と頭を洗おうかな…?



と思い浴槽から上がり身体や頭を洗っていると、翔くんが浴槽の中から尾鰭で湯船のお湯を、



バシャッ!!


バシャッ!!




と悪戯っ子の様な顔をしてかけてくるもんだから、



「もおっ!!」




と言い浴槽に近付くと湯船の中に入りお湯の中で両手を組み合わせて、



ピュッ!!



ピュッ!!




と翔くんにお湯を飛ばすと、それを見て翔くんは楽しそうに俺の真似をして遊んでいた。









そろそろ遊び疲れていたのか翔くんは脱衣所を指差して口をパクパクとさせたので、




「ん?
翔くん、お風呂から上がる?」




と聞くと翔くんがコクッコクッと頷いたので、




「ちょっと待っててね。」





と言い、先に自分がお風呂から上がり身体を拭いて服を着た後、再びバスルームへと向かい翔くんを湯船から出してあげると脱衣所へと向かった。



翔くんの身体を拭いてドライヤーで髪を乾かしてあげると翔くんが俺の持っているドライヤーに手を伸ばしてきたので、



「ん?
どうした?」


と言うと俺の頭を指さしてきたので、


「俺の髪を乾かしてくれるの?」



と聞くとコクンと頷いたので、




「じゃあ、お願いします。」



と言うと脱衣所の床に座り翔くんに髪を乾かして貰った。







俺の髪も乾いたので、



「じゃあ、リビングへ戻りましょうか?」



と言い、ハッとしてしまった。








そういえば今日は大野さんが居るんだった…。


翔くんのこの下半身のお魚の姿を見られたら…。


と思い、翔くんのお魚の足(?)をバスタオルでぐるぐる巻きにして、


「これでよしっ!!」


と言い、翔くんと一緒にリビングへと戻ったのだった。























リビングへと戻るといる筈の大野さんの姿が見当たらず…。



「あれー?
大野さん…?」


と名前を呼ぶが返事もなく…。




きっと眠くなって先に部屋へ行って寝たんだな、と思いリビングのローテーブルの上を片付ける事にした。




「翔くん、何か飲む?」



と聞くとビールの缶を指差したので、



「了解。」



と言うとキッチンへ行き冷蔵庫の中からビールの缶を取り出し、グラスへ注ぐとリビングで待つ翔くんの所へと持って行った。



「はい、どうぞ。」


とコースターの上にグラスを置くと、翔くんは嬉しそうにして、




〝ありがとう。〟


と言うと美味しそうにビールをゴクゴクと飲んでいた。






お皿を食洗機にセットし、繊細なデザインのグラスやお皿だけは手洗いをした後、冷蔵庫を開けてビールを取り出し自分用のグラスとビールを持ってリビングへと戻り、




「翔くん、おかわりいる?」




と聞くと翔くんは嬉しそうにコクンと頷いたので、翔くんのグラスにビールを注いであげ、自分のグラスにもビールを注ぎ、



「カンパーイッ!!」



と言いグラスをカチンと合わせてビールを飲んだのだった。

















⭐to becontinued⭐