新月の夜に願い事をした後どうなったかというと…。





願い事は未だに叶う事はなく…。






オレは相変わらず潤がやって来ると犬の姿になってしまっていた…。






なんだよぉ…。


結局、新月の夜に願い事をしても叶わないんじゃんっ!!





新月の夜に願い事すると叶うなんて、そんな事はやっぱりないんだな…。







なんて思いながら過ごしていると夏休みも終わり、新学期が始まった。










その日、学校が終わってから私服に着替えてウチにやって来た潤は母さんに、


「夏芽さん。
ショコラと一緒にウッドデッキに行ってもいい?」


と聞くと母さんは、


「いいわよ。
潤くん暑いからこれ持っていって飲んでね。」


と言いレモンスカッシュの入ったグラスを潤に手渡していた。


「夏芽さん、ありがとうっ!!」


と言うと潤は振り返り、



「ショコラーッ!!
ウッドデッキの所に行こうっ!!」


と言った。


〝うんっ!!
行くっ!!〟



と返事をして潤と一緒にウッドデッキへと向かった。












ウッドデッキに到着すると潤はレモンスカッシュの入ったグラスをコトンと床に置き、ゴロンと寝転がった。


両手を広げて大の字に寝転がっている潤が、


「ショコラーッ!!
おいでーっ!!」


と呼んだので潤に近づくと、両手でグイッと引っ張られて潤の胸の上に乗せられた。


ギューーーッと抱きしめられて、オレの頭や背中を撫でてくれる潤からはいつも以上にご機嫌なオーラが溢れ出していて、



〝潤。
何かいい事があったの?〟


と聞くと潤はニコッと笑うと、


「ショコラ。
今日は満月なんだよ。」



と言いながら、青空に浮かぶ白くて丸い月を指差した。





〝満月だと何かあるの?〟


潤の綺麗な顔を覗き込みながら聞くと、




「うん。
新月の夜に願い事をすると、その次に来る満月の夜にその願いが叶うんだよ。」


と潤がオレの背中を撫でながら嬉しそうにそう言った。







〝えっ!?
そうなのっ?〟


と聞くと、



「うん、そうなんだよ。
だから、この間の新月の夜に願った願い事は今日の満月の夜に叶うんだよ。
ショコラも何かお願い事をした?」



と潤はそう言った。






〝したよっ!! 
潤っ!!
それ本当なのっ!?〟



その言葉を聞いてガバッと身体を起こすと、バランスを崩してしまい潤の身体の上からウッドデッキの床の上へと転げ落ちてしまった。







〝わぁーーーっ!!〟


グルンと横に一回転すると、カランとグラスの倒れる音と共にガラスの中に入っていたレモンスカッシュがバシャッと流れ出す音がした。


「ショコラ、大丈夫…?」


と潤が慌てて身体を起こしてオレを抱き抱えてくれたが…。









ウッドデッキに仰向けに寝っ転がっていた潤の背中の辺りからレモンスカッシュの香りがしたのだ…。



〝あ…。
潤、背中大丈夫?〟



と聞くと、

「なんか背中が冷たい…かも…。」


と潤が呟いた。



抱き抱えてくれている潤の腕から抜け出して、潤の背中を見ると…。


潤のシャツの背中は濡れていて、ペロリと舐めるとレモンスカッシュの味がした。




〝潤っ!!
ごめんっ!!〟


と謝ると、


「なんでショコラが謝るんだよ。」


と潤は振り向いて白い歯をニッと見せて笑ってそう言った。


 



〝いや…。
だってオレが転げ落ちたから…。〟


「そんな事よりショコラ、怪我していない?
大丈夫?」


と潤がオレの顔を覗き込むと、頭や身体をそっと撫でて怪我がないかを確かめていた。







〝大丈夫っ!!
それより潤、シャツを脱いだ方がよくない?〟


潤が黒いTシャツの上に羽織っている白いシャツを口で咥えて、クイクイッと引っ張りシャツを脱ぐように潤にそう言うと、


「ショコラ、ありがとう。
まだ暑いし、すぐに乾くから大丈夫だよ。」



と潤はそう言うが、濡れたシャツをそのまま着ているのもどうかと思い、



〝でも潤、シャツが濡れているから気持ち悪いだろう?
脱いだ方がいいって。〟




〝シャツ、ベタベタするよね?〟



〝濡れたシャツ着たままだと潤が風邪引くよ?〟
  



何度も潤にそう訴えかけると、






「ショコラがそこまで言うのなら…。」
  


と潤は渋々シャツを脱いでTシャツ姿となったのだった。






























⭐to be continued⭐