朝食を済ませた後、出発の時間までまだ少し時間があったので、どうしようかな?と思っているとJが、


「かず、裏山の祠に行ってみない?」

と聞いてきた。


昨晩は暗くてあまりよくわからなかったし、Jとの思い出の場所をもう一度見てみたいと思い、



「うん。行ってみたい。」


と答えると相葉さんが、



「にのちゃん、Jちゃん、俺も一緒に行ってもいいかな?」


キラキラと瞳を輝かせて聞いてきた。


すると〝鳥さん〟も、



「俺も一緒に行く。」


と言ったので、
(〝鳥さん〟の場合はJと俺を2人っきりにしたくないんだろうけど…。)



「じゃあさ、4人で行こうよ。」


と俺が言うと、Jが



「うん、そうだね。」

と言うと相葉さんが、



「わーい。

にのちゃん、Jちゃんありがとうっ!!」

と言って俺とJに抱きついてきた。




「ちょっとーっ!!

どさくさに紛れて何してるんだよっ!?」



「えっ!?

お礼のハグなのにー。」



「ふふふふふ。

まー、くすぐったいよー。」



「ほらいいから、時間が無くなるから早く用意しろ。」

と〝鳥さん〟に言われて、



「「「はーいっ!!」」」


と返事をして裏山に行く準備をし、智さんと花浅葱さんに裏山の祠に行く事を伝えて、4人で玄関まで行くと、





「皆んな、ちょっとここで待っててね。」


とJが先に玄関から外に出て、空に向かって手をかざすと空にはうろこ雲が現れた。




うろこ雲って秋の雨の降る前に現れる雲だよね…?

今は6月なのに…。




しばらくすると雨がポツリポツリと降り始めた。


「これでよしっ!!

皆んな、出ても大丈夫だよ。」


とJが微笑みながら言い、そのまま4人で裏山の祠へと向かった。










大きな木々に囲まれた山道を、ゆっくりゆっくりと登って行く。
 
雨が降っているせいか、土の匂いや草木の匂いを強く感じる。
 
 
 
そうそう、こんな感じだった。
 
 
 
細い道の両脇には大きな木が生えているので、日中でも薄暗く感じるこの道を、子供の頃の俺はいつも雨の中何度も何度も祠のある場所まで通っていた。
 


そう、Jと会うために…。



 
子供の頃の俺からすると祠までの道のりは大冒険で、しかも天狗の〝潤くん〟と会えるうえに、雨の結界まで張ってくれているなんて、ゲームや漫画の主人公にでもなった気分だった。
 


 
あの頃の気持ちを思い出しながら山道を登り続けていると、裏山の祠が見えてきた。






するとJが、



「かずっ!!」

と言って俺の手を引いて祠まで走り始めた。





祠に到着し、はあ、はあ、と息を切らせながら、  




「懐かしいな…。

J、ここでよく一緒に遊んだよね?」


とJに言うと、Jは遠くを見つめながら、




「うん。」

と答えた。





「楽しかったなー。」

と言うと、





「ボクも楽しかったよ、かず。」

Jが嬉しそうに俺の顔をジッと見つめながら、そう言った。



 


傘から手を出し、降り注ぐ雨が俺の手を避けているのを確認して、


 

「ねえ、この雨はJの雨の結界だよね?」


と聞いてみた。





「うん、そうだよ。」


 

「じゃあさ、傘を閉じても大丈夫だよね?」



「うん。

ボクたちは濡れないから大丈夫だよ。」



「J、傘閉じてこっちに来てくれる?」


と自分の傘を閉じながらそう言い、手招きをしてJを自分の方に呼んだ。




ゆっくりと俺に近づいてきたJに、



「J、いいモノ見せてあげるよ。」

と、少し背伸びをしてJの耳元で囁き、Jの位置から〝鳥さん〟の表情が見えるのを確認してから、


「J、〝鳥さん〟を見ててご覧。」

と言い、Jをギュッと抱きしめた。


チラッと〝鳥さん〟の方に目線をやると、案の定、一瞬にして不機嫌そうな顔をした〝鳥さん〟が見えた。



「J、ほら見てご覧。

〝鳥さん〟めっちゃご機嫌斜めでしょ?」

と言うと、Jは、



「しょおくんどうしたのかな…?

お腹痛いのかな…?」


と心配そうに言った。


真剣にそんな事を言うJに思わず、ぷっ、と吹き出してしまった。


そんな俺をJが不思議そうな顔をして、首をかしげて見つめてくる。






Jのそういう所、本当に天然だよね…。




「違うよ。

〝鳥さん〟はね、俺に焼きもち焼いているんだよ。」




「えっ!?何でっ!?」


 

「何でって、俺がJをこうやして抱きしめているから。

だって〝鳥さん〟は本当はJに誰も触れさせたくないんだもん。」




「そんな…。」



「そんな事あるんだよ。

J、これで納得した?安心出来た?」


と言うと、Jはもう一度〝鳥さん〟をそっと見つめて、

ふふふふ。

と、笑みを浮かべると、




「そうだと嬉しいな。

かず…ありがとうっ!!」

と綺麗な瞳を潤ませながら、今度はJから俺に抱きついてきたので、さすがに〝鳥さん〟が慌ててやって来て、





「潤、和也、もうそれくらいでいいだろう。」


といつもより低い声でそう言うと、俺とJを引き離し、どさくさに紛れてJを抱きしめていた。




「結局自分がJを抱きしめたいんじゃんっ!!」

と〝鳥さん〟に抗議すると、



「それの何が悪い…?」

と口角をクイッとあげて〝鳥さん〟がそう言うと、〝鳥さん〟に抱きしめられているJが、物凄く嬉しそう顔をしていて…。





ああ…Jよかったね。

と俺まで何だかちょっと嬉しくなっちゃっうよ…。




思わずニヤけてしまい、その様子を見ていた相葉さんが俺の傍に来て、


「くふふふふふ。

にのちゃん、よかったね。Jちゃん幸せそうだね。」


と、ギュッと俺の手を握りしめながら言ってくれた。


「うん、よかった。」

と相葉さんを見つめながらそう言うと、相葉さんが太陽のような笑顔で、




「俺もにのちゃんを幸せにしてあげるね。」


なんて言うから、俺は恥ずかしくて何も言えず俯いてしまった。




ふと視線を感じて〝鳥さん〟の方を見てみると、案の定ニヤニヤしながら俺を見ているだろう〝鳥さん〟の姿があった。



ホントあの人は俺のこういう所を見逃さないよな…。
(後で覚えてろっ!!)




⭐to be continued⭐