あれは十年前の春…。


庭にある桜の木を縁側から愛ていると…。


智和の〝おおみ屋工房〟から戻ってきた子供の姿をした潤が庭から走ってきて、息を切らせながら俺に、


「しょおくん…、お願いがあるんだけど…。」

と言ってきた。


「お願いってなに?」


と問うと、


「あのね…。

今年の〝永遠の契り〟の記念日にね…。

えっと…。

智和を…招いてあげたらダメかな…?」


と答えた。


「えっ!?」


「智和にもあれを見せてあげたいんだ…。

見るときっと元気になると思うから…。」


ダメかな…?

可愛く首を傾けて、俺の眼を見つめながら言う。


そんな可愛い顔をされたら…。


「潤がいいのなら…いいけど…。」

と言うしかないじゃないか。


「本当っ!?いいのっ!?

しょおくん、ありがとうっ!!」


潤が嬉しそうな顔をして沓脱ぎ石(くつぬぎいし)で急いで下駄を脱ぎ縁側に上がってきて、俺に飛びついてきたかと思うとスリスリと俺の胸に顔を押し付けて、



「しょおくん、…本当にありがとう…。」


と震える声で言った。



胸元に潤の瞳から溢れ出した涙を感じながら、


「どういたしまして。」


と言いながら、あんなに嬉しそうにしていたが、きっと不安で押し潰されそうだっただろう潤をギュッと抱きしめてやる。
 





潤が何故そんな事を言うのか…。

何となく分かる気がするする…。





俺たち天狗…というより妖族は、人の死期が分かるんだ…。





先日、智和に会った時にそれが視えた…。



俺は時々しか智和には会わないが、毎日のようにおおみ屋工房に通っている潤には一日一日近づいている智和のその時を敏感に感じ取っているのだろう。




智和の命は…、年を越せればいいがもって年内だろうな…。




俺の胸でグズグズと泣く潤の頭をそっと撫でてやると、涙で眼を潤ませた潤が顔を上げて俺を見上げてきた。


潤の綺麗な涙の流れている頰に、何度も何度も唇を当てて、


「じゅーん。泣き止んでよ。」

と言うと、


「な、泣いてないよっ。」

慌てて手で涙を拭う。




「本当に?」


「本当の本当にっ!!」



ぷはっ、と吹き出し、

「本当の本当に、って何だよそれ。」


と言うと、ふふふふ、と潤が笑った。




「潤、元気になるおまじないだよ。」

と言って潤の両の頰にそっと手を添えて、チュッと触れるだけの口づけ潤の唇に落とした。


「しょおくん、ありがとう。

元気になったよ。」


お礼に、と潤もチュッと触れるだけの口づけを、俺の唇にそっとしてくれた。


「ふふ…。ありがとう、潤。」

と言い、潤を再び抱きしめると、潤が俺の背中に手を回し抱きしめ返してくれた。



そんな俺たちを包み込んでくれているかのように、桜の花びらがヒラヒラと綺麗に舞い降りていた春のとある日の事だった…。







⭐to be continued⭐





YouTubeで流れたTOKIO嵐4番勝負の潤くん、可愛かったですね♡
松岡くん、ダメと言いながら潤くんに練習させてあげるなんて、優しすぎますっ!!