朝、Jを相葉さんのご両親に預けて、相葉さんと一緒に駅まで向かってから学校に行く。

そして、学校帰りもしくはバイト帰りには、相葉さん家にJを迎えに行って、相葉さん家のお店でご飯を食べるて帰る。

というのが、毎日の日課になっていた。




その日は相葉さんも俺もバイトが休みで、いつものように相葉さん家のお店で夕飯を食べた後、俺のアパートでゲームをする事になって、
相葉さんとJが一緒に対戦ゲームを、俺はスマホのアプリのゲームをしていた。




それまで相葉さんとゲームに夢中になっていたJが、急に険しい顔をして手を止めた。

「どうしたのJ?顔、怖いよっ。」

「ウウン。何でもナイ。」

「Jちゃん、どこが痛いの?」

Jはフルフルッと首を横に振る。




Jは何事もなかったかのように、またゲームに夢中になった。




「ムゥー!!まー、モウ1回っ!!」

「うひゃひゃひゃ。今度も負けないよー。Jちゃん、受けて立つっ!!」


相葉さんに負けて悔しそうなJが再び相葉さんに勝負を挑む。




すると、またJの手が止まり…。


今度は目をキラキラさせて、嬉しそうな表情をしたと思ったら、


「鳥サンッ!!」

と言って、コントローラーを投げ出してベランダに走って出ていった。


「えっ!?Jっ!?」

「どうしたのっ!?Jちゃんっ!?」


ベランダから身を出して、

「鳥サーーンーーー!!」

両手を振って叫んでいる。


「ちょっと、Jっ!?危ないし、近所迷惑だからっ!!」

「うわっ!!Jちゃん危ないっ!!」

「雨も降ってるから、滑るし危ないよJっ!!」


ベランダから乗り出すJを、相葉さんと2人で落ちないように引っ張る。


そんな俺たちにはお構いなしにJは、

「鳥サァァーンっ!!コッチィー!!」

と、叫んで手を振っている。



「本当にどうしちゃったのよ、Jっ!?」

「えっ!?えっ!?何?何?何?Jちゃん大丈夫っ!?」

相葉さんも俺もパニクる。


〝鳥さん〟なんて俺たちには見えないし、真っ暗な雨の中、Jが一体何に向かって叫んでいるのかもわからない。

J、本当に大丈夫なのかな…?

不安がよぎる…。




暫くすると、雨の中スゥーーッと黒い塊が飛んで来た。

黒い塊は迷いなく、Jに向かって飛んでいる。


「何?あれ?」

「何かこっちに向かって来てる?」



バサバサバサッ

翼の羽ばたく音がする。

鳥…?

Jの言う〝鳥さん〟…?


黒いから一瞬、カラスかと思った。

けど、羽の色は黒だけではなく金色の羽も混じっていて、よくよく見ると鷹とか鷲のような鳥だ。

瞳の色は真紅色で…。


こんな鳥、見たことがない…。




その鳥は、Jの差し出した腕にゆっくりと止まった。



「鳥サン…。」

Jが嬉しそうにその鳥の頭を撫でてやると、鳥も目を瞑って気持ちよさそうにしている。



「Jの言っていた〝鳥さん〟って…。」

「ウン。鳥サンッ。」

「何の鳥だろうねー。」

と言いながら相葉さんが触ろうとすると、〝鳥さん〟はバサバサッと翼を広げて嫌がった。

「あ、ごめんね。驚かせちゃったね。ごめん。ごめん。」

相葉さんが両手を合わせて〝鳥さん〟に謝る。

「動物に好かれる相葉さんが嫌われるなんて珍しいね。」

と言いながら、〝鳥さん〟を見ると…。



あれ?右足に白い何がついついる?


よくよく見ると、長細く折り畳んだ白い紙を、〝鳥さん〟の足に結びつけてある。

「J、鳥さんの足に何か結びつけてあるから、鳥さんの足から外してもいいかな?」

とJに聞いてみる。


「鳥サン、かず、ソレ取ッテもイイ?」

Jが〝鳥さん〟に聞くと、

〝鳥さん〟が右足を俺の方に突き出した。

紙を〝鳥さん〟の足から外すために、そっと〝鳥さん〟の足に触れる。



あれ…?

雨の中飛んで来たのに、紙も〝鳥さん〟も濡れていない。


ふと、反対の左足を見ると…。





指輪…?



この指輪、Jの左手の薬指にはめられている指輪に似ている。

だけど〝鳥さん〟のは、石の色は紫だ。

Jのは赤い石だ。



俺の視線に気付いた〝鳥さん〟は、翼を広げてバサバサッとJの腕から飛び立った。

元来た方向に飛んで行く〝鳥さん〟に向かってJが、

「鳥サン、待ッテー!!」

泣きそうな声で叫んだ。

〝鳥さん〟は、Jの声に一瞬振り向いた。




が、そのまま飛び立って行った。




「鳥サーン!!明日モコノ時間に来テねーっ!!」

Jが〝鳥さん〟の飛び立って行った方向に向かって叫んだ。


〝鳥さん〟の返事はなく、ザーザーッという雨の音だけが響いていた。





⭐to be continued⭐