じゅんの頭を撫でながら見渡す風景は…。
そこはホテルではなく…。
 
えっ?
ここは…何処だ…?
 
見覚えのある風景。
見覚えのある建物の中。
ここは…?
ここは…。
 
ジュニア時代に練習していたスタジオの廊下…?
んな訳ないよな…?
 
 
じゅんの頭の上に置いていた右手に、暖かい何かかが触れた。
ふと手を見ると、じゅんの小さな手が俺の手の上に重ねてられていた。
 
「お兄さん、本当に大丈夫…?」
「どこか悪いの…?痛いの…?」
じゅんが心配そうに見上げている。
 
不安そうにゆらゆらと揺れる大きな瞳を見ていると、安心させてやりたくなる。
 
じゅんの頭からそっと手を離し、じゅんの目線に合わせて腰を落とし、じゅんの両手を握りしめて、
「心配させて、ごめんな。大丈夫だから。」
と微笑んだ。
 
じゅんもそれを見て嬉しいそうに、
「よかったー。」
と微笑んで、俺の手を握り返してきた。
 
 
 
「ところで今日は、何年、何月、何日、何曜日かな?」
と、じゅんに聞いてみる。
 
「んーとね。」
目線を上にし、考えながら答える。
 
「今日はね、1996年の5月17日の金曜日だよ。」
 
「そっか、1996年の5月17日の金曜日か…。」
 
「そうだよ。」
 
「じゅんくん、もしかして今日からレッスン受けたの?」
 
「うん。そうだよ。」
 
ダンスは楽しいんだけど、ボク不器用だから振り付けを覚えるのが大変で…。
こっそり残ってやっていたらこんな時間になっちゃって、それで慌てて帰ろうとしてたんだ…。
内緒にしてね。
と、ペロッと舌を出して気まずそうに話した。
 
 
 
 
ここは1996年の5月17日の金曜日…。
潤の入所した日。
2019年の5月17日金曜日と、同じ月日、同じ曜日。
今日はやっぱり特別な日だったんだ…。
 
 
 
 
 
⭐to be continued⭐