映画三昧 #2634 ⭐️⭐️☆ イングリッシュ・ペイシェント(96) | juntana325 趣味三昧

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不毛な砂漠が美しい。「アラビアのロレンス」に始まる、過酷な砂漠の美しさは、いつも魅了される。もちろん、鳥取砂丘ぐらいしか訪れたことがないから、そんなことが言えるのかもしれない。しかし、作品の内容によって、砂漠の存在は違ってくる。この作品は、砂漠が、外界からの音を消して、二人のだけの世界を演出する。




物語は、記憶を失くした瀕死の火傷患者と、それを献身的に看護するハナで始まる。彼は、イギリス人ということ以外何も分からなかったが、ハナと話をするうちに、次第に記憶が蘇ってくる。身動きもほとんど取れない男だったが、彼は記憶の中で、旅をしていた。




第二次大戦前夜の北アフリカ。彼(ラズロ)は軍の要請で、イギリス人のクリフトン夫妻と、砂漠の詳細な地図作りに携わっていた。そんな時、無機質な砂漠で、ことさら美しく輝いて見えるのが、クリフトン夫人のキャサリンだ。砂漠の中なのに、埃まみれにもならず、磨き上げたダイヤモンドようだ。彼の記憶の中では、すでに美化された存在になっていたのかもしれない。ラズロは引かれ、拒否し続けたキャサリンも結局、一線を越えてしまう。この見事なまでなアバンチュールは、記憶がなせる技のような気もする。




しかし、北アフリカのような狭い所で、二人の関係はすぐにバレる。夫ジェフリーの自殺覚悟の飛行機事故で、キャサリンは瀕死の重傷を負い、ラズロが発見した洞窟の中で息絶える。彼も救助を求めようと砂漠を彷徨うが、間に合わなかった。その時、彼女の元に向かうための飛行機を、ドイツ軍と機密の地図を交換してしまう。キャサリンの亡骸を飛行機で搬送中に撃墜され、彼は大火傷を負う。




彼の冒険の顛末が、フラッシュバックしながら語られていく。終戦が告げられ、彼のアバンチュールも、決死の脱出口も、一夜の夢のような気がしてくる。彼の魅力的な冒険譚は果たして本当だったのか分からないが、ハナは、話の最後まで彼を看取る。今でも、冒険心とロマンスを掻き立てる至極の一本だ。




解説

第二次大戦を挟む激動の時代、二つの大陸にまたがって繰り広げられる愛のロマンを描く、官能的な映像叙事詩。世界で最も権威ある文学賞といわれるイギリスのブッカー賞を受賞したマイケル・オンダーチェの長編小説『イギリス人の患者』(邦訳・新潮社)を、「最高の恋人」のアンソニー・ミンゲラの監督・脚本で映画化。製作は「アマデウス」「存在の耐えられない軽さ」のソウル・ゼインツ、製作総指揮は「ファーゴ」のボブとハーヴェイのワインステイン兄弟、スコット・グリーンステイン。エロティックに砂漠の映像をとらえた撮影は「アメリカン・プレジデント」のジョン・シール、音楽は「愛と勇気の翼」のガブリエル・ヤーレ、衣裳は「バードケージ」のアン・ロスが担当。主演は「ストレンジ・デイズ 1999年12月31日」のレイフ・ファインズ、「ミッション:インポッシブル」のクリスティン・スコット=トーマス、「カウチ・イン・ニューヨーク」のジュリエット・ビノシュ。共演は「愛しすぎて 詩人の妻」のウィレム・デフォー、「カーマ・スートラ 愛の教科書」のナヴィーン・アンドリュース、「サークル・オブ・フレンズ」のコリン・ファース、「対決」のユルゲン・プロホノフほか。第69回アカデミー賞で監督賞、助演女優賞(ジュリエット・ビノシュ)、美術賞、撮影賞、衣裳デザイン賞、編集賞、オリジナル作曲賞、音響賞の9部門を受賞。第54回ゴールデン・グローブ賞で作品賞、オリジナル作曲賞を受賞。97年キネマ旬報外国映画ベスト・テン第5位。