映画三昧 #2440 ⭐️⭐️* 冷たい晩餐(17) | juntana325 趣味三昧

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2組の夫婦というより、混迷した兄弟の愛憎ドラマ。なぜ、ここまで兄弟の確執が進んだかといえば、弟ポールの精神状態としか言いようがない。ここでは、まともな兄スタンを演じるリチャード・ギアよりも、ボール役のスティーブ・クーガンの個性が強烈に光る。




話は、この予約の取りにくい高級レストランに、なぜ集まったかという疑問符から始まる。どう見ても仲の良くない兄弟が、なぜ食卓を共にするのか。その理由をフラッシュバックさせながら、ディナーを同時並行する。前菜が出て、料理が次々と運ばれてくる段になると、事情は深刻になってきて、料理を楽しむような雰囲気とは程遠い。その中で、ポールは、一人過去の事を皮肉交じりに喋りまくる。それがしつこくて、観ている方も、げんなりしてくる。




彼らの息子たちの犯した犯罪をどう扱うか、三者三様、賛否両論、意見はどこまでいっても平行線。スタンとポールだけでなく、妻と夫でも微妙に意見が違う。混迷の度を深めるが、スタンは、政治生命を賭けて、息子を自首させて罪を償わせるといい、二人の妻は、このまま様子を見ようという。ポールは黙して語らない。そんな状況で息子たちの悪行を目撃したスタンの養子ボーが、警察に訴えるという。デザートが出てくる頃に、収集がつかない事態になる。




親たちの中で、正論を吐いているのがスタン。罪悪感を引きずって生き続けるは、苦悩に満ちている。最も正しいが、親の選択としては、最もハードだ。彼も、相当な覚悟がいる。


ところが、蓋を開けてみると、彼が提出した法案が否決され、彼の政治生命は、風前の灯。そこで、息子をネタに、自らの清廉潔白さをアピールしようというのだ。ほとんど売名行為に近いが、息子をエサにするから、世間はそうは見ないだろう。逆に、息子の罪を隠蔽して、暴露された時には、 それこそ彼の政治生命は終わる。




この夜の家族会議は、息子を助けるという名の、スタンの政治パーティーに過ぎなかった。そんな筋書きも知らずに、ポールは、裏切り者ボーを襲いにいってしまう。ラストは、ボーの安否が分からないまま心配するスタンの妻、法案可決の電話が入り、浮かれる様子のスタン、が対比して映される。果たして、親の都合で、息子達の処遇はどうなるのだろうか。論点が、どんどんズレていく展開は、なかなか巧妙だ。




解説

ヘルマン・コッホの同名小説をリチャード・ギアら豪華キャスト共演で映画化。次期首相候補の政治家スタンと弟で元教師のポールが、それぞれの妻を伴って高級レストランへ食事にやってくる。2組の夫婦は何不自由なく幸せそうに見えたが、会話が進むうちに、それぞれの子どもたちがある事件を起こしたことが明らかになっていく。その事実を公表するか隠蔽するかで葛藤する4人は、やがてある決断を下す。スタン夫妻をギアと「アイアンマン3」のレベッカ・ホール、ポール夫妻を「あなたを抱きしめる日まで」のスティーブ・クーガンと「ハドソン川の奇跡」のローラ・リニーがそれぞれ演じる。「あぁ、結婚生活」「アイム・ノット・ゼア」の脚本などで知られ、ギアとは「スト・イン・マンハッタン 人生をもう一度」でもタッグを組んでいるオーレン・ムーバーマンが監督・脚本を担当。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2018/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018」(18年7月14日~8月24日)上映作品。