映画三昧 #2336 ⭐️⭐️* ライ麦畑で出会ったら(15) | juntana325 趣味三昧

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「ライ麦畑でつかまえて」を読んでいないと、面白さは半減してしまうかもしれない。ストーリーは、それとは別だが、主人公ジェイミーの境遇を「ライ麦畑でつかまえて」のホールデンに重ねているので、原作とは違っても、小説と映画とを共有する不思議な感覚になる。




舞台は1960年代、高校でイジメにあっているジェイミーは、演劇サークルに所属している。「ライ麦畑でつかまえて」に共感して、それを演劇にしようと試みる。正直、あの小説のテイストが伝わるだろうか。高校生が、ニューヨークに出て、酒を飲み、娼婦を買う、そして、自分を取り巻く社会は、欺瞞に満ち溢れ、失望していく孤独な青年の心象風景を表現できるだろうか。それは劇中、サリンジャー自身が述べるように、唯一無二の「ライ麦畑でつかまえて」は、映画や演劇にすると、別物になってしまう。サリンジャーは、それを嫌った。昨今の小説は、最初から映像化を意識したような小説の作りになっていて、会話調の文体が多く、あざとい。しかも、映像化すると90分から100分くらいに収まる丁度いい尺になっていたりする。




この作品では、それを承知で、ジェイミーはシナリオを書く。つまり、「ライ麦畑でつかまえて」を昇華して、自分の演劇版「ライ麦畑でつかまえて」を完成する。ディーディーという良き理解者がなければ、彼は、その完成にこぎつく事は出来なかっただろう。孤独であるといいながらも、人は決して孤独ではない、「ライ麦畑でつかまえて」でも、純真無垢な子供たちにホールデンは救われる。




最後は、なかなか粋だ。ジェイミーが「ライ麦畑でつかまえて」をシナリオにして、演じる事は、サリンジャーにとっては、折り込み済みだった。考えてみれば、あれだけのベストセラーだ、正式なオファー以外にも、無断使用はいくらでもあっただろう。その喧騒から逃れたくて、彼はひっそり暮らしていたに違いない。そんな彼が、そっとジェイミーに、「ライ麦畑でつかまえて」を離れ、オリジナルのシナリオを書くことを勧める。本当に、こんな事がほとんど事実に基づく話だったのだろうか。そうあって欲しいという願望のように思えてならない。



解説

1951年の発売以来、青春小説の名作として読み継がれているJ・D・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」に魅了された青年の成長を描いた青春映画。69年、ペンシルベニア州。級友たちともなじめずに孤独な高校生活を送っているジェイミーは、「ライ麦畑でつかまえて」に感銘を受け、この小説を演劇作品として脚色することを思いつく。しかし、そのためには原作者であるサリンジャーの許可が必要であることを知る。隠遁生活をするサリンジャーに連絡を取ることは容易なことではなく、ジェイミーは演劇サークルで出会ったディーディーとサリンジャー探しの旅に出ることを決意する。ジェイミー役を「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」のアレックス・ウルフ、サリンジャー役を「アダプテーション」でアカデミー助演男優賞を受賞したクリス・クーパー、ディーディー役を「ラブリーボーン」のステファニア・オーウェンがそれぞれ演じる。