ダーク・ファンタジーとは、確かに、言い当てて妙だが、思い出されるのは、「汚れなき悪戯」「禁じられた遊び」「オズの魔法使い」といった作品。子供の想像力は、大人が及びもつかないファンタジーの世界を創り上げる。これは、決してファンタジーではない過酷な現実を描いた作品だ。
主人公オフェリアは、父を亡くし、生活するために母親が大尉と結婚した事で、戦場の前線に住むことになる。そこから、ファンタジーが始まる。彼女の周りで起こる不思議なことは、現実逃避的で、心踊るような物語というより、まだ幼いオフェリアの痛々しさばかりが、伝わってくる。
ラビリンスの番人パンが、地底世界への案内人だ。この番人こそ、オフェリアの現実逃避のシンボル。パンは、オフェリアに試練を与え、それをクリアすると、地底世界へ案内するという。戦争と冷酷無比な義父という過酷な現実と、夢のような地底世界の狭間で、幼いオフェリアは、迷走する。ブラックというより残酷だ。
最後は、オフェリアは命を落とすが、「汚れなき悪戯」のラストのように、安堵感と幸福感に溢れている。彼女は、地底世界で、亡くなった両親の元に、王女として案内される。良心に対面した彼女の満面の笑みが、たまらなく印象的だった。