映画三昧 #2221 ⭐️⭐️➕ ブラジルから来た少年(78) | juntana325 趣味三昧

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ナチの軍医メンゲレに扮したグレゴリー・ペックの狂気ぶりは、見ものだ。最初から、一人テンションが高い。94人の名もなき一般人を一定期間内殺せという、なんとも不可解な指令。誰もが、疑心暗鬼になりながらも、暗殺を実行していく。この作品の最大の謎は、この殺人の目的と、メンゲレ医者の高揚の原因だ。




それが、分かり始めるのは、後半になってから。ヨボヨボのユダヤ人リーバーマン役のローレンス・オリヴィエが、体に鞭打って、真相を究明しようとする。ユダヤ人の執念はわかるが、彼にとって、この事件は少々重荷に見える。この作品が、グレゴリー・ペックの迫力の割に、盛り上がりが今ひとつなのは、それに対抗する主人公リーバーマンに覇気が不足していたせいではないだろうか。




一連の事件に、とんでもない野望が隠されていた事が分かると、少し戸惑う。確かに暗殺は阻止しなければならない。しかし、ヒトラーのクローン達はどうなるのだろうか。この作品では、クローン=ヒットラーという定義で進むから、その存在自体に危機感を覚えてしまう。しかし、実際には、メンゲレが思うような結果になるのか、甚だ疑問だ。メンゲレが、ラストに、クローンと対面すると、彼の興奮度は最高潮に至る。彼は、まるで、ヒトラーの再来のように、クローンの少年を、熱い眼差しで見つめる。その一方で、オリヴィエ扮するリーバーマンは、声も出さずにぐったりしている。もどかしいシーンだが、結局は、クローンの「イカれてる」の一言で、ドーベルマンに襲われ憤死する。それを「凄えー」と言って見つめる続ける少年の姿に、思わずヒトラーを重ねてしまう。しかし、クローンだからと言って、全く同じになる訳ではないので、それが前提のこの作品の漠然とした恐怖心には、冷めた印象を持った。だから、ラストショットで、少年が、犬に引き裂かれたメンゲレの死体写真を熱心に見つめるショットは、かなり違和感を持った。



解説 

ナチス復興とクローン人間計画の恐怖を描いたアイラ・レビンの傑作サスペンス小説を「猿の惑星」「パピヨン」のフランクリン・J・シャフナー監督が映画化。アウシュビッツ収容所で死の天使と恐れられた遺伝学者ジョセフ・メンゲレ。彼は各地に潜伏中のナチス残党とともに、65歳の公務員94人を殺害するという奇妙な計画を企てる。ナチス残党を追跡していたリーバーマンは、この事件を追う内に彼らの恐るべき本当の狙いを知る。