映画三昧 #2110 ⭐️⭐️☆ ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男(17) | juntana325 趣味三昧

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1980年、テニス界で世界的な人気を誇ったビヨン・ボルグとジョン・マッケンローが繰り広げたウィンブルドン決勝戦での世紀の対決を、実話をもとに映画化。端正なマスクと、コート上での冷静沈着なプレイから「氷の男」と呼ばれたビヨン・ボルグは、20歳でウィンブルドン選手権で初優勝し、4連覇の偉業を成し遂げた。絶対王者として君臨するボルグの前に現れたのが、宿敵ジョン・マッケンローだった。天才的な才能を持ちながらも、不利な判定には怒りをあらわにして審判に猛烈に噛み付いていくマッケンローは「悪童」と揶揄された。80年ウィンブルドン選手権決勝戦のコートで、そんな真逆の個性を持つ2人の天才が対峙する。ボルグ役を「ストックホルムでワルツを」「蜘蛛の巣を払う女」のスベリル・グドナソン、マッケンロー役を「トランスフォーマー」シリーズのシャイア・ラブーフがそれぞれ演じる。




80年のウィンブルドンは、記憶に残る大会だった。というよりも、記憶に残る決勝戦だった。フルセットの末のボルグの勝利。コートで跪いて天を仰ぐ彼の姿が、目に焼きつく。静のボルグと動のマッケンロー。ボルグは、ほぼネットプレイはせず、きたボールをトップスピンでコーナーに撃ち返す。方や、マッケンローは、サーブアンドボレーでそれに対抗する。動静対決、硬軟対決、見ていて比較し易い二人のプレーだった。




この作品は、そこに至るまでの二人のストーリーが、語られる。特に、ボルグのウィンブルドン5連覇へのプレッシャーには、かなり時間を割く。それは、夜が眠れないなんていうストレスではなく、思わず自殺してしまいそうな重圧だ。彼の氷のような冷めた表情の裏には、悶絶するような苦しみが隠れていた。当時、テレビで見ていた時には、冷静沈着なボルグを、鋼のようなメンタリティの持ち主だと感じた。今思えば、表情に出さないのではなく、表情に出ていたのかもしれない。


一方、マッケンローは、「悪童」の名にふさわしく、紳士のスポーツの名を汚し続ける。開き直り、ブーイングされる事など、意に介さない。ウィンブルドンの舞台は、彼にとって、最もふさわしくないコートかもしれない。




そして、決勝まで登りつめた二人の勝負。これは、あの歴史に残る試合の記憶が、蘇るような映像。マッケンロー得意の口撃はなく、一進一退の攻防が、手に汗握る張り詰めた空気を生む。とにかく、この試合は4時間近い大熱戦だった。いつの間にか、どちらかを応援するというより、二人の執念のプレイに、魅了されていた。マッケンローのボレー、ボルグのパッシング、あの時は、本当に凄い死闘だった。今思い出しても鳥肌が立つ




そして、フルセットの末、ボルグ勝利。いつまでも終わって欲しくないような、終わってホッとしたような、曖昧な気持ちになった。例の天を仰ぐボルグの姿がスクリーンに映し出されると、あの時の感動がまた湧き上がる。二人と時間を共にした人にしか分からないかもしれないが、二度こんな素晴らしい試合は見れないと思った。(しかし、その16年後、伊達=グラフの二日間の死闘に、再びウィンブルドンで感動した)




ボルグは、翌年マッケンローにウィンブルドンで敗れ突然の引退をした。なぜだ?まだまだ見たかったのに、そんな気持ちになったが、今日の作品を観て、ボルグという名に対するプレッシャーに、耐えきれなかったのだろうと想像がつく。少年時代悪童だったボルグは、繊細であり、完璧主義者だった。悪童を心の奥に秘めながら、表情ひとつ変えない彼に、マッケンローは、どう映っただろうか。決勝戦でマッケンローの悪童ぶりは身をひそめ、真摯な姿勢でテニスに打ち込んだ。今考えると、テニスのテクニックにも唸らされたが、二人がテニスプレイヤーとして、無心でテニスに打ち込む姿に、皆感動した。