映画三昧 #1865 ⭐︎⭐︎+ もっとしなやかにもっとしたたかに(79) | juntana325 趣味三昧

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ロックバンドのグルーピーの少女との出会いによってニューファミリーを志向している妻子ある青年の自分の生活に対する疑問や苦悩を描く。小林竜雄の一九七八年度城戸賞準入選作の映画化で、脚本は「新・人間失格」の小林竜雄、監督は「帰らざる日々」の藤田敏八、撮影は「肉の標的・奪う!」の前田米造がそれぞれ担当。


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藤田敏八の監督作品は、昔に観たアイドル映画以来かもしれない。これは、にっかつの作品だが、当時は成人映画で封切られたのだろうか。今ならR12指定くらいの内容に思える。没後20年の企画上映、今尚根強い人気があるのに、少し驚かされる。


とにかく、勇一役の奥田瑛二が、ただ一所懸命過ぎて、単調でまったく情感が出ない。妻に逃げられた男の哀れさも、裏切られた男の悔しさも、それでも愛し続ける苦しさも、何もない、酷い。そこに一抹の不安を感じながら、妻君枝が、スクリーンに登場すると、こちらの方が、説得力がある。なぜ逃げたのか、具体的ではないが、伝わってくる夫婦生活の息苦しさを感じさせる。高沢順子のおかげで、一本芯が通った


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そして、謎の少女彩子。小悪魔的な存在で、勇一を掻き回す。主体性に欠ける彼は、持て遊ぶには格好のターゲットで、君枝の出現によって、板挟みになり、お決まりのパターンで困惑する。勇一の人の良さにつけ込む森下愛子は、まさに水を得た魚のようだ


ラストは、やはり勇一の人の良さが出てしまう。車に轢かれた彩子は、ケロッとした顔で疾走するが、勇一は血まみれ。勇一のいない広場で、一人息子を見守る君枝の心に、何が去来するのか。寂しいからと言って、夫勇一の元に戻ってきたのに…。後悔と淋しさ、鬱陶しい夫がいなくなった安堵の気持ち、様々な心模様が伺えるラストショットだった。タイトルの「もっとしなやかにもっとしたたかに」とは、主人公に送りたい処世術の一言だった。


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