映画三昧 #816 アメリカン・スナイパー(14)⭐️⭐️☆ | juntana325 趣味三昧

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「ミリオンダラー・ベイビー」「許されざる者」の名匠クリント・イーストウッドが、米軍史上最強とうたわれた狙撃手クリス・カイルのベストセラー自伝を映画化。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの隊員クリス・カイルは、イラク戦争の際、その狙撃の腕前で多くの仲間を救い、「レジェンド」の異名をとる。しかし、同時にその存在は敵にも広く知られることとなり、クリスの首には懸賞金がかけられ、命を狙われる。数多くの敵兵の命を奪いながらも、遠く離れたアメリカにいる妻子に対して、良き夫であり良き父でありたいと願うクリスは、そのジレンマに苦しみながら、2003年から09年の間に4度にわたるイラク遠征を経験。過酷な戦場を生き延び妻子のもとへ帰還した後も、ぬぐえない心の傷に苦しむことになる。イーストウッド監督とは初タッグのブラッドリー・クーパーが、主演兼プロデューサーを務めた。


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戦争は人間らしさを失う。これが80歳を過ぎたクリント・イーストウッドの答えだった。作品は、中東の戦地に4回赴いた主人公の心の移ろいを、スクリーンに映し出していく。始めは微かだが、徐々に大きい影となって心を蝕ばんでいく。PTSDだ。戦場の恐怖感、あるいはそれに魅入られていく喪失感が、深い闇のように見事に表現されている。主人公が、戦場に魂を吸い取られたように、放心状態で家族と過ごす様子は、独特の緊張感が漂う。主人公のブラッドリー・クーパーの演技は、息をのむ。

戦争の英雄は、突出して、敵を倒すのだから、それだけ神経的にやられてしまうだろう。160人以上も人を撃ち殺した、と思うと想像に余りある。その苦しみをどう吐き出していくのか、戦争後遺症は、深刻な社会現象だ。

戦争で人間らしさを失ったのは、何も主人公のクリスだけではない。それが、ラストの結末に繋がっていく。戦争の根深さは、中東で終わらない。戦争後遺症は、戦場だけでなく、ウイルスのように平和な社会にもはびこっていく。宗教や民族のために戦争するなら、強いアメリカは、人のために平和であって欲しい。イーストウッドのメッセージだった。

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