映画三昧 314 髪結いの亭主(90)⭐⭐♡ | juntana325 趣味三昧

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名匠パトリス・ルコント監督の1990年の名作。主演はマチルダにアンナ・ガリエナと、アントワーヌにジャン・ロシュフォール。映画は、ほとんど二人きりの時間で占められる。

初めてルコントを観たのが、この作品だと思う。当時の印象は、ねっとりと官能的なフランス映画だったが、時を経過してみると、まるで印象が違う。デジタルリマスターにしたせいか、乾いた感じの映像に、愛情を信じて疑わない、男女の姿だけが、映される。偏執的愛情を表現しているように感じていたが、思ったよりも普遍的な愛情を表している。愛情の純度は、計れないが、この作品ほどの、純度の高い愛はないのではないかと思えてくる。

愛し合う二人が、いつしか死であったり、浮気であったり、何らかの理由で破局を迎えることは道理だが、そうなる前に、幸せのうちに死を選ぶ贅沢を描いた作品が、かってあっただろうか。マチルダは、さぞかし幸せをかみしめたに違いない。アントワーヌは、マチルダを失ったが、10年に及ぶ二人の思い出をリピートして暮らす。これもまた、幸せの一つの形かもしれない。

一方で、アントワーヌは、マチルダに対する愛を疑わないが、実は「髪結いのマチルダ」を愛していたとも感じさせる。だから、アントワーヌはマチルダがいなくなっても、永遠に髪結いの亭主でいることに幸せを覚えている。彼には、それしか生きる術はなく、それ以外に必要はない。マチルダも、それに気づいて、自殺したのかもしれない。ルコントのファンタジーで、やっぱり偏執的な愛の物語だった。