まろやかな油の匂いが鼻を掠めた。
その独特な匂いに呼び覚まされ目を開けた。
顔を動かし周りを見渡すとそこは淡い色調で整えられた寝室だった。
アンティーク調のデスク、テーブル、ソファなどが眠るまでの和やかなひと時を楽しむ為に配置されている。
ただ、この部屋は普通とは違い、部屋の隅に白い布が掛けられたイーゼルが置かれており、そこだけが浮き上がっているように見えた。
部屋の様子を見ていたムギョルは軽い頭痛に頭を振った。
通された客間で紅茶を飲んでいたはずだった。
佐久間に連れられ訪れたのは海が見渡せる山の斜面に建てられた瀟洒な洋館だった。
その洋館に住む画家を紹介され、絵のモデルになって欲しいと頼まれた。
同じ韓国人だと言う画家の言葉に頷きながら話しを聞いていた。
モデルをしてあの画像が表に出ないならそれも仕方がないかと思った。
紹介された画家は優しげな笑みを浮かべ穏やかに話していた。
その画家の顔を見ているうちに強烈な睡魔に襲われ、それからの記憶がない。
口を付けた紅茶に何か入っていたのだろうか?
今がその日の昼なのか翌日なのかもムギョルにはわからない有様だった。
僅かに開いていた窓から涼やかな風が吹き込んで、レースのカーテンを揺らしていた。
穏やかな午後の昼下がりに微睡んでいただけのような錯覚を起こしそうになる。
だが、自分の身の上に起きたことはこの部屋の雰囲気とは明らかに異質なものだった。
ベッドで寝かされてはいた。
けれども、ムギョルは何も身に付けてはいなかった。
「ムギョルくん。目が覚めたかね?」
寝室の扉が開き画家が入って来た。
声のした方に顔を向けたムギョルは慌ててカラダを隠すために怠く感じるカラダを起こし、シーツを引き寄せようとした。
けれども、シーツに伸ばした手を傍に来た画家に摑まれカラダを隠すことを阻まれた。
画家はムギョルの顔を覗き込み呟いた。
「隠さなくてもいいだろう?
キミは美しいね。
もう少し若い少年を佐久間に頼んであったのだが、キミの絵ならオークションでも充分高値がつきそうだ。」
舌舐めずりした画家が冷たい笑みを浮かべた。
身じろぎすると下半身に疼痛が拡がる。
背筋に寒気が走る。
それは馴染みのある感覚だった。
またカラダを奪われたのか?
絵のモデルになるだけだと言われたがこういうことだったのかと思うと言葉も出なかった。
少し怯えた表情のムギョルに画家は満足げに頷いた。
「さあ、目覚めたところで早速キミの絵を描かせてもらおうかね。
もう君の準備は私が済ませておいたからね。」
ニヤリと笑った画家はそう宣うと二回手を打った。
すると隣りの部屋と繋がった扉が開き、赤銅色の肌をした全裸の大男が入って来た。
「さあ、テソン。その子を可愛がってあげなさい。
いつものようにお前が飼っている小鳥のように鳴かせるんだよ?」
「……あぁ……うっ………」
その男は言葉を上手く喋ることが出来ないのか、呻いて頷いただけだった。
テソンと呼ばれた男がベッドに近づいてくる。
男の無表情な顔が悪戯にムギョルを怯えさせた。
ムギョルは身を捩って近づいてくる男から逃れようと背を向けた。
だが、這いずってベッドを降りようとしたムギョルの腰を男は易安と捕まえた。
足をバタつかせて抵抗しても男の手はそんなことではびくともしない。
振り返ったムギョルの目にはそそり立つ男のモノが映り、その大きさに身の毛がよだつ。
「何するんだよ!離せ!」
ムギョルは男の行為をやめさせようと叫ぶように言葉を投げつけたが、そんなムギョルに構うことなく男はムギョルの後ろの窄まりに自分のモノを当てがって来た。
ムギョルは逃れようと身を捩り男の腕に抗うが男の力は強く、掴まれた腰は男に押さえ込まれた。
「あぁっ!いやだ!…んんっ…」
男のモノは大きさに関わらずムギョルの中に押し入ってくる。
「あぁ…んっ…あんっ……」
男はムギョルの中に全長を収めると、自由になった手でムギョルの手首を掴んだ。
男のモノを穿たれ、腕を捻じり上げられるように背後に引かれ上体が起こされる。
画家の眼前に男と繋がったカラダが晒される。
ムギョルのカラダを舐めるように見つめながら画家は薄笑いを浮かべた。
男の腰が動きだし、大き過ぎるモノが直接ムギョルの中を刺激する。
「あぁ…んっ…あ……」
あんなにも大きなモノを捻じり込まれているのに、自分の中は易安と受け入れている。
先ほどの画家の言葉が思い起こされた。
眠っている間にこの破廉恥極まりない行為の準備をされていたのだろう。
ムギョルは眠らされている間に画家が自分のカラダを弄び、そして今また見ず知らずの男に犯されていることに眩暈がするようだった。
男は機械じかけの人形のようにひたすら腰を動かしている。
男のモノに中を擦られ、ムギョルはその痛みと、その後からせり上がってくる淫猥な快感に顔を歪ませた。
それを見た画家は急いでイーゼルの白い布を取り去ると筆を取り、
熱に浮かされたように筆を動かし出した。
そんな画家の有様が男に揺さぶられるムギョルの瞳に映る。
ムギョルが見ていることに気付いた画家はムギョルに語り掛けてきた。
「昔はね、私は自分でモデルを犯しながら、その顔をこの目に焼き付け描いたものだった。
しかし、流石にこの年になると私のモノはすっかり役に立たなくなってしまってね。
今ではテソンに代わりを務めてもらっているのだよ。
テソンがモデルを鳴かせ、その顔をこのキャンパスに写し取る時こそが私の至福の時なのだよ。」
筆を動かしながら画家は呟くとニヤリと笑った。
ムギョルはテソンに犯され、画家はそんなムギョルの姿をキャンパスに写し取る為に絵筆をひたすら動かす。
ムギョルのカラダと心を蝕むような時間が暫く続いた後、何を思ったのが画家が筆を置いた。
画家が男に蹂躙されながらも自分を睨みつけてくるムギョルの傍に来た。
すっと手を伸ばすと顎を掴み、ねっとりとムギョルの唇を舐め上げた。
ムギョルは驚きに目を見開いた。
画家がいきなり仕掛けて来た行為に虫唾が走る。
唇を離した画家はベッドサイドのデスクの引き出しから赤い紐を取り出した。
そして、空いた方の手で自分の意に反して反応してしまっているムギョルのモノをわざと強く握った。
「あぁっ!やめ…っ!」
思わずムギョルの口から意に反して嬌声が洩れた。
薄笑いを浮かべたままの画家はムギョルのモノの根元を手にした紐できつく縛った。
そのままその手でグリグリとムギョルの鈴口を刺激した。
後ろの窄まりをテソンのモノで埋め尽くされ、前にも強烈な刺激を与えられ、
ムギョルはカラダを仰け反らせて喘いだ。
ムギョルのモノは蜜をしとどに垂らすが、イクことは赦されず、画家の容赦ない嬲りは続けられる。
ぐちゅぐちゅと水音を立てながら画家の指に弄られ羞恥と嫌悪にムギョルの目からは涙が流れた。
その涙を見た画家は再びイーゼルの前に戻ると狂ったように筆を動かした。
「ムギョル君、私は今、猛烈に創作意欲が湧き上がっているよ。
その苦痛に歪みながらも快楽に支配された顔。
君の中の剥き出しの本能、欲望が見えるようだ。
君のその表情が私を掻き立てるのだよ。」
画家はこれこそが描きたかったものだと言わんばかりに何度も頷きながら絵筆を走らせる。
「…もう……む…り……」
ムギョルが譫言のように呟く。
けれども夢中で描き続ける画家の耳にはその呟きは届かない。
「…あ…あぁ……んっ……」
ムギョルの口から喘ぎ声が洩れる。
テソンがひたすら繰り返す抽送にガクガクと首を揺らされ、ムギョルの肌には薄っすらと汗が滲んだ。
「ああ、そうだ。
ムギョル君。テソンのスタミナは底無しだよ。
私も楽しんだことがあるが、テソンは私が命じれば幾らでも腰を動かしていられるんだよ。
君も観念して彼のカラダを楽しんだ方が身の為だよ。」
「…んっ…誰が…そん…な……」
ムギョルは画家の言葉に負けまいと睨み返した。
セックスがもたらす苦痛と快楽に零した涙でほんのりと赤くなった眦で睨んでも、それは画家を喜ばせるだけだった。
「君はその目がいいね。堪らんよ。
そうそう、佐久間からは多少の無理をさせても君は我慢するだろうと聞いたからね。
だいたい絵が描き上がるのは二、三週間といったところだろうかね。
それまでは、いろいろと楽しませてもらうよ。
君は私の作品になるのだから。」
画家の呟きをムギョルは朦朧としてきた意識の中で聞いていた。
作品に…な…る?
意味のわからない画家の言葉を遠くに聞きながらムギョルは堪えきれずに意識を手放していた。