オランダのアムステルダムから、学校のあるウィットビーまで、自転車で走る事にした。
これはシベリア鉄道に揺られているあいだ、想像していた事。
本当はドイツ辺りから始めたかったが、時間がなくなってしまった。
アムステルダムからデンハーグヘ、その隣町、ホエックバンホーランドから、
イギリスのハーウィッチまでフェリーが出ている。
その距離600キロほどか。
日本でも何度か長期のツーリングを経験しているのでなんとかなる、、、だろうか。
キャンプサイトにテントを張りながら、9月22日までにウィットビーまで。

という訳でパソコンなど不要なものを学校に先に郵送、
少しだけ身軽になって自転車旅行が始まった。

アムステルダムから最初の目的地、デンハーグまで、約70キロ。
しかし、もうまたまたやってしまった。
朝の10時から走り始めて、到着したのは夜の9時。
走行距離は120キロに達してしまった。

原因はいつもと同じ。
まず、地図がない。オランダを走るのは一日だけなので、ケチった。これがまず間違い。
次にやはりコンパスが安定しない。
そしてオランダの道。
自転車と完全に分かれているのだ。
それはそれで自転車にとっては安全なのだが、
日本で言う国道のような、目的地まで一本で結ぶような幹線道路にも自転車が入れない。
それでも幹線道路と並走できるような所ならまだよいが、そうはいかない。
公園の中の散歩道のような所を道路標示だけを頼りに、曲がりくねりながら進む。
そして突然表示が消える。
もう全く分からなくなる。
そんな事を繰り返しながら、、、

走りながら、ちょうど一年前はラオスのパークセーにいたなぁと考えていた。
あの時の彼女との、最後の旅行。
自転車のスピードはいつも何かを思い出させ、僕を別の所に連れて行く。

オランダの田舎道を自転車で進む。
この国は、裕かだなぁと思う。
大きい家、きれいな庭が、キャラバンを持って、ボートを浮かべて、きれいな犬を飼って。
でもこんな裕かさが、保つわけがないとそうも感じる。
何かの犠牲の上でないと、こんなものは成り立たない。
そんな風に感じた。

いったい何十人に道を尋ねただろう。
ユトレヒト経由で、デンハーグに到着。
インフォメーションも当然閉まっていて、キャンプ場を探せなく、仕方なくホテルに宿泊。25.25ユーロ。
とにかくお腹が減って仕方がなく、ハンバーガー、パン、ポテトチップスをバカ食いして寝る。

ウランバートルのイドレGHのキッチンでお酒を飲みながら。
ある人が「人生は小説みたいだ」とそう言った。
ぼくは次の言葉を待った。
「いくらでも面白く書ける」

人生について、そう言えるほど、ぼくはまだ強くない。怖すぎる。
でもこの旅行なら。
「まだまだ面白くしてやる」と、そう思う。