風と共に去りぬ、僕の電気プラグ。
結論。大事な物は、人に渡すな。

ソウルのバックパッカーズGHでの事。
ドミトリー、隣りのベッドのカナダ人、Windがドタバタと。
手には電気シェーバーを持って、上半身は裸。
部屋中のコンセントにシェーバーのプラグを差し込んでみる。
入らないらしい。
僕は絵葉書を書きながらも、だいたい予想がついていた。

「このゲストハウスはひどい!コンセントのプラグ形式が全て一緒だ!一種類しかない!」
彼が持っていたシェーバーは日本製品と似たような先が四角い、[ | | ]、こんなタイプ。
韓国で使われているのは、「C型」。これ。[ ・・ ]。先が丸い。間隔も違う。
当然、部屋にいくつかあるコンセントは全て、丸穴2つ。
一流ホテルなら色々な型の「穴」が壁に空いているだろうが、
ここは一泊17000wのゲストハウス。期待する方が悪い。
バックパッカーなら変換プラグを必ず持っているものだ。

絵葉書を書く手を止めて、自分のバックパックを開封。
ウィンドに変換プラグを貸してやる。
サンキューとトイレの鏡に向ってヒゲを剃り始めたウィンド。
僕は絵葉書を書き終え、投函ついでに夕食に出かけた。

それが、ウィンドを見た最後だった。
いつの間にか彼のスーツケースは消えて、姿を消した。
僕の変換プラグと共に。

やり場のない、怒り。
悔しさと、切なさと、あと何だったっけ。
困る。
変換プラグがないと、パソコンもカメラやMP3の充電もできない。
確かに値段は安いものだ、でも韓国ではまず手に入らない。
韓国で買う電化製品は皆元々丸穴2つなのだから、
韓国人にとっては全く必要ないもの。

宿のスタッフに聞くと、
「大きな旅行用品店や外国人向けのショップなら、、、」との事。
僕も翌朝早くチェックアウトして、ソウルを出なければならないのだ。
大阪から送ってもらうか、インターネットで探してみるか、、、

はぁ。
あのプラグは最初の旅行の時に母親からもらったものだ。
約20カ国一緒に旅行をした、思い入れのあるものだ。
僕にとってはとても大事なものだ。

ウィンドに、悪意があったのなら、正直まだいい。
あのプラグがどうしても欲しくて、ずっと困っていたのなら。
大事にあのプラグを使えばそれでいい。
でも彼はおそらく長期旅行者ではない。
プラグの事などあまり関心も知識もないだろう。
で、母国に帰ったらポイだろう。

自分の大事なものが、
他人に全く価値を理解されず、
無下にされるのは本当に悔しい。
金を貸してそのままドロンの方がまだマシ。

大事な物は、他人に渡してはいけない。
そう思う。
でも困っていたら助けたいとも思う。
うぅん、、、悔しい。