毎日御堂筋を自転車で走る。
気になっているものが2つ。
一つは道沿いにある彫刻『JILL』
女の人の裸の塑像なのだが、誰かに似ている。
さっぱり思い出せない。
毎日、通る度にまっすぐに見てみる。
思い出せない。

もう一つがいつもビッグイシューを売っているおじさん。
やはり、着ている服はぼろぼろだし、髪はぼさぼさで顔も垢でテカテカ。
真っ黒な手にビッグイシューを2冊掲げて、バンザイして立っている。
彼らの常で無愛想、当然売れているのを見た事ない。
しかし毎日立っている。御堂筋の同じ場所に、同じバンザイで。
「どうぞ」とも「発売中です」ともなんとも言わない。
ただ、「押忍」と、それだけ言ってわずかに(ほんのわずかだ)頭を下げる。
誰かが通る度に、何遍も何遍も「押忍」。
押して忍んでの「押忍」。
目も合さない。

気になる。
JILLもビッグイシューも。
どうして「JILL」と「押忍」のおじさんなのだろう。
それはどうでもいい事できっといつか忘れてしまうのだろうけど、
2004年の秋、僕は彼と彼女が気になって仕様がない。