3月10日のことはよく覚えている。
僕は浜田山のジョナサンで脚本を書いていて、
ゆき詰まってなん杯目かのコーヒを飲んでいて、
窓越しに井の頭通りを眺めていた。
なにかの旗が千切れて飛ばされて、
「3月10日風が強い日」とメモ帳に書いた。
2001年の3月10日のことだ。

喪失感には。
傍観者でいること。
必要以上に嘆かないこと、悲しまないこと。
失った物、見送った物の数を数えないこと、
替わりの物で埋めようとしないこと。
どこにも行かないこと。
誰にも言わないこと。