三日目。
昼前、446キロ地点にて、、、
整備中の彼らに呼ばれる。
曰く「この部品がもうダメだ。次のトラックストップでスペア部品がなければ
取り寄せに2、3日かかる」と。
目の前が真っ暗になる。
いくら遅くても少しずつでも前に進んでいるから気が張っていられたのだが、、、
480キロ地点、大紅柳灘(ダーホンリュータン)に到着。
やはり部品はないという。取り寄せ決定。
こんな何もない町、というよりは、食堂が8軒ほどだけの集落で2、3泊、、、


二人には悪いが、もう気が持たない、、、
またトラックを探し始める。
しかしほとんどが逆方向、アリからイエチョンに行くという。
一台だけこれからアリに向うというトラックがあった。
交渉すると200元で行ってくれるという。出発は「馬上(マーシャン、すぐ!)」だという。
喜び勇んでアブドゥルの元へ。
まあ、予想はしていたが、「300元払え」と。
目標まで半分も来ていない、しかも故障しておいて、
450元の内300元よこせというこの、、、強欲。
225元で充分だろうと言うと、荷物を下ろしてくれない。
はあ、、、結局250元で決着。
合計値段は250元プラス200元で変わらないからいいか。
そして、大荷物を抱えてさっきのトラックまで駆けて行った所、
「400元払え」と。

今度のドライバーは漢人。
血気盛んそうな若者なのだが、事情を飲み来んだのだろう。
僕が早くアリに行きたがっている事、この
トラックストップにアリ行きは自分の車一台だということ。
で、倍額の要求。
さっきは200だったろと詰め寄るも、
「ズーベンレン、バカヤロー」とぎゃあぎゃあ笑っている。

途方に暮れた。
軍の車にも声をかけてみたがアリには行かないという。
今更アブドゥルの車に戻っても、元の450元では決して行かないだろう。
他のウイグル人ドライバーにも声をかけてみたが、彼らは仲間意識があるのだろう、
ニヤニヤして話もきいてくれない。

選択肢。
この何もないトラックストップで、トラックを待つか。
それもウイグル人だと、おそらくアブドゥルが横槍を入れるだろう。
漢人かチベット人で、しかもアリ行き。少ないね、、、
もう一つの選択肢、先ほどの漢人。

ぶん殴りたいほどむかつく野郎に、頭を下げなくてはならない、こんな旅。
いったいこれはなんだろう、、、
大荷物を抱えて、漢人の青トラックへ。
またお得意の「ズーベンレン、バカヤロー、ハイハイ!!」をくり返している彼ら。
これは、おそらく中国が反日教育の為に作った戦争当時の映画の一部なのだろう。
日本の軍人が偉そうに「バカヤロー!!」と。それに「ハイハイ!!」というそういうワンシーン。
頭を下げる、財布の中身を見せる、なんとか400元を300元にしてもらった。

そしてトラックに乗車。
びっくりした。ドライバーが2人と聞いていたのだが、
食堂からぞろぞろと漢人が出て来て、、、あの狭いトラックキャビンに僕を含めて8人!
ドライバーが二人。修理見習いが一人。あとは僕と同じヒッチ客らしい。
このキャビンは1、5畳ほど、、、2畳は無いだろう。
その中で交代ドライバーは後ろで寝ている。
更に人民解放軍の制服を着た青年が高山病なのか、、この人も寝てる。
いまだに、、、どうやってあそこに座って、半ば立って、8人いたのか分からない。
そんな状態で最大の難所、5000m地帯が続くアクサイチンを越える、、、
大丈夫か、、、

トラックの中で。
背中には誰かの膝、肘が常に突き刺さっている。
足はもちろん踏まれている。荷物もどこに紛れたか分からない。
そんな中で、、、
またズーベンレンバカヤロー大会で盛り上がっていらっしゃるわけだが。
そして片指を拳に挿入して、日本人女性を侮辱するポーズで笑い合う彼ら。
僕は眠ったフリをしている。
すると、窓際にいる青年が僕の登山靴を窓から捨てるマネをする。
眠ったフリをやめてコラコラする僕。

 



ここはアクサイチン。無人の荒野。
標高5000m。一番近くの集落まで150キロ。
僕はここにいるだけでも違法。
テント、食料の入っているバックパックは荷台の一番上に金網でバインドされている。
僕は無力、、、彼らに、何もできない。
一戦吹っかけるか?トラック叩き下ろされたら、死ぬよ。

この際、正義が何かはおいといて、とことん無力だ。
「力なき正義は無能なり。」
あの言葉が大脳をぶちぶちと刺す。
嫌だ、嫌だ、怖い、怖い。
自分が今考えている事を究極していくと、
憲法9条問題、核問題に行ってしまう、、、
嫌いだ、右的考えは。
それでもとことん無力で、悔しくて。
頭痛でも8人乗りのせいでもなかった。
また眠れなかったのは。