きりぎりすを、読んでいる。
太宰治の短編集だ。
昔、よく読んだ。ショックを受けたり勇気づけられたりした。
大学生当時の自分がひいた下線に、笑ったり今でも唸ったりしながら。

太宰の中期の作品は宝石だと思う。
ページを繰っていて、ページを繰れない。
このセンテンスに、今ページを繰ってしまえば当分出会えないのかと思うと、
そうなる。
晩年などの初期作品や人間失格、斜陽などの後期よりも、輝いて見える。

「作家は平気で歩いて居ればいいのです。五十年、六十年、死ぬまで歩いていかなければならぬ。『傑作』を、せめて一つと、りきんでいるのは、あれは逃げ支度をしている人です。それを書いて、休みたい。自殺する作家には、この傑作意識の犠牲者が多いようです。」

8年前に引いたアンダーライン。
そして今日の。

「自分はどうしても誠実な人間になり切れなかったから、せめて罪滅ぼしに一生、、、」
「東京はセル、をまた言った」