夜中に爪を切る。
カチ、カチと何かが断定されるような音。

子供の頃、爪は噛んでチギっていた。
チギった爪は並べて食べていた。
足の爪は体を屈めて噛んだ。
お兄ちゃんの足の爪を食べた事だってある。
時々、食べた爪や飲み込んだガムが胃の中から溢れ出る夢を見た。

爪がどこから伸びてくるのか分からなかった。
爪先からか、内側の白いフチドリからなのか。
カッターナイフで傷をつけて”どこから伸びるかの実験”をした。
たいていいつも、傷は消えていた。

カチカチと、夜の部屋に響く。
爪切りを駆使しながら、切り落ちたひとかけらを口に入れてみた。
細かく噛み砕きざらざらにして飲み込む。
不潔だろうが、ひどい味はしない。
十何年ぶりで爪を食べた日、今日のあの苦しさを忘れずに。