こんにちは。
先日のセミナーで出ていた論文の中でも飛び抜けて存在感を出していたのが、Tinettiさんの1988年に出された
“Risk Factors for Falls Among Elderly Persons Living in the Community” N Engl J Med.
だったと思います。
なぜ現場の人間である僕が見てもこの論文が凄いかというと、転倒を見る視点が出来上がっていることです。
大きく3つの結果を述べていて、
1つ目が、転倒発生率
2つ目が、転倒リスクの影響度合い
3つ目が、転倒リスクの数と転倒発生率
です。
ちょっと簡単にまとめてみます(間違ってたらごめんなさい)。
75歳以上の地域高齢者336名を1年間調査したところ、
転倒発生率は32%(1年間で1回転倒した人)
つまり、高齢者の3人に1人は年間1回は転んでるってことですね。
もちろん要介護だともっと転倒しやすいですし(以前行った研究ではデイ利用者で50%くらいでした)、
高齢者は転びやすいんだという認識を広めたのがまず凄い!
しかも骨折率が6%というのも出ていて、医療費なんかも見ていけるデータになってるんです。
これ1988年というネットも全然ない時代ですよ!神ですね!
2つ目の転倒リスクの影響度合いというのは、その転倒リスクを持っていたら、持っていない人に比べて何倍転倒しやすいかというのを見ています。
注目すべきは薬(論文には鎮静剤と書いてあった)です。
28.3倍ですよ!
衝撃ですよね!運動機能とかよりよっぽどか薬の影響で人は転倒してるんですよとわかったわけです。
余談として、当時の医療体制として、服薬管理が良くなかったのでこういう結果になってるので、最近の研究ではここまで顕著ではないようです。
つまり転倒リスクって影響度合いがそれぞれ違って、しかもそれは人によっても変わってくるんじゃないかということが読み取れます。
PTとしては、この知識を使って対策が取れる転倒リスクを徹底的に排除していく関わりが大切ですね。
ちなみに以前、有料老人ホームの転倒対策をしてほしいという仕事があり、施設としての転倒リスクを調査したことがありますが、様々ある転倒リスクの中で職員の勤務時間が問題でした。
具体的には、早出と遅出の交代の時間に30分の差があり、その30分が夕食の誘導時間と被っていたんです。
案の定、その時間帯の手薄な場所で転倒が多く発生していました。
そこで遅出の勤務開始時間を30分早めたら施設全体の転倒発生数が劇的に減少しました。
ちょっと論文とは違う話ですが、影響度合いの大きい転倒リスクから対策するという作戦はこの論文から学んだことです。
3つ目の転倒リスクの数と転倒発生率というのは、転倒リスクをいっぱい持ってる人は転びやすいよ!ということです。
しかもそれは線形に増えていって、この論文だと転倒リスク4つ持ってたら、転倒発生率78%となっています。
ここも臨床的な見方をグッと高めてくれる示唆で、全部の転倒リスクに対応できなくても、一つでも減らせると転倒しづらくなるよということです。
この3つの視点は最近の研究でも同様に使われていますし、まさに転倒のキング論文と言えますね!
まだまだ面白い論文はいっぱいあります。PTとしては臨床応用だけでなく、豆知識として語れるようになれると後輩の教育にも役立ちますね!
と、ここまで山本の私見が入りまくった解釈をお伝えしましたが、論文はこのように活用できるように解釈することが必要です。そうでないと研究にしか役立たなくなるから。
解釈も含めてまた学びがあれば共有していきます。
もっと深く知りたい方はこちらの浅井先生の講演もオススメです。
それでは。
山本純志郎


