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米国野球殿堂入りを決める全米野球記者協会(BBWAA)による投票結果がこのほど発表され、今年は17年ぶりに該当者なしだった。
 今年から、現役時代に禁止薬物の使用疑惑が浮上したロジャー・クレメンスバリー・ボンズサミー・ソーサの3人が候補に浮上したが、いずれも殿堂入りに必要な得票率75%には達しなかった

 クレメンスは現役時代、歴代最多となる7度サイ・ヤング賞を受賞している。また、ボンズが歴代最多の762本塁打を放ち、ソーサがマーク・マグワイア(現ロサンゼルス・ドジャースのコーチ)と熾烈な本塁打王争いを演じたことは記憶に新しい。
 その戦績だけ見れば殿堂入りには申し分ないが、そうならなかったのはやはり、禁止薬物の使用疑惑の影響だ。BBWAAは3人の元選手に殿堂の門を開けなかった。

 そんな3人の候補だが、もし本当に薬物を使用していたのなら、むしろ殿堂入りさせるべきではないのか。もちろん、ニューヨーク州クーパーズタウンにある本物の野球殿堂ではない。薬物の殿堂だ。
 3候補を薬物の殿堂入りさせることで、禁止薬物の使用に対する、何からの抑止力になるのではなかろか。

 たしかに、3候補にも言い分があるだろう。先日、ヒト成長ホルモン(HGH)を検出する血液検査を今季中にも抜き打ちで実施することで選手会と合意したメジャーリーグ機構だが、禁止薬物の使用への対応に本腰を入れたのはつい最近のこと。3候補が活躍した1990年代は、見て見ぬふりをしていた。

 だが、2007年に薬物使用の実態をまとめたミッチェル・レポートが発表されてからも、選手の禁止薬物の使用は後を絶たない。
 マイナーリーグでも先日、ヒューストン・アストロズの傘下2A、コーパスクリスティ・フックスに所属するジョナサン・シングルトンが、2度目の薬物規定違反により50試合の出場停止処分を課されている。

 薬物汚染はアマチュア球界にも広がっている。町山智浩著「アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲」(集英社文庫)では、2002年に元大学野球選手が拳銃自殺を図ったことを紹介している。
 当時は、メジャーリーグ入りの夢破れての自殺を見られたが、実際は禁止薬物のステロイドによる精神崩壊が原因だった。
 ステロイドには、精神の過剰な躁鬱自殺衝動を引き起こす副作用があると言われている。ロイドレイジと呼ばれているが、自殺した元大学野球選手も生前、「キャメロン・ディアスが試合を見に来る」「僕はキリストだ」と、妄言を口にしていた。
 息子の異常に気がついた父は、すぐさまステロイドの使用を咎めたが、彼は平然と撥ね退けた。「ボンズだって、やっているんだ」。

 彼のように禁止薬物に手を染めるアマチュア選手は、決して少なくない。セントラル・ミシガン大学トレイシー・オルリッチ博士によれば、2003年、10代のアマチュア選手のステロイドの使用者は30万人に達した。
 メジャーリーガーをはじめ、プロスポーツ選手の禁止薬物の使用は、氷山の一角。彼らの下で、多くのアマチュア選手が薬物に汚されているのだ。

 そんなアマチュアスポーツ界から禁止薬物を一掃するためにも、クレメンス、ボンズ、ソーサの3候補も、禁止薬物の使用が事実なら、薬物の殿堂入りをすべきだろう。

 もちろん、彼らだけに泥をかぶせるわけにはいかない。選手の禁止薬物の使用を看過した、コミッショナーのバド・セリグ氏や球団オーナー、選手会ら関係者も同罪だ。

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