『智さん………
なぜ自殺したの?』
健太が…………
智が………
智なのに…………
健太として聞いてくる。
なんておかしな話だ。
記憶がないから、
しかたがないことだけど
もし、俺の話が………
記憶を思い出させるきっかけになったら………
そう思うと………怖い。
本当に怖い。
思い出した後で
智が、健太が………
どれだけ苦しむんだろう…………
考えると怖くてたまらない。
でも、俺たちが話をする中で
どうしても止まってしまう時間がある。
あの日………
花火大会の日………
その後のこと……
俺たちはいつも
地雷を踏まないように会話に気を遣う。
けど、そろそろ限界………だった。
一か八かの賭けに出る。
『…………今から8年前……………
俺たちが中学3年の夏……………。』
健太は、俺の目を見てしっかりと聞いていた。
『夏の終わりを告げる………
花火大会の日に
智は、誘拐されたんだ。』
と、言った。
健太は最初、意味がわからないのか
キョトンとして
『ゆうかい………?』
と、呟いた。
『そう。
誘拐。
若い大学生に誘拐されたんだ。』
と、俺の言葉がやっと飲み込めたのか
手で口を押さえた。
『…………花火大会の日………。
俺は、智に告白したんだ。
智も俺が好きだって言ってくれたよ。
幸せだった。
こんな幸せがあるなんてって思った。
俺たちの明日は幸せに満ちてるって思ってた。
でも、夜中に………
智が帰ってきてないって
智のお母さんから連絡がきて……………』
思い出してきたら
自然と涙が溢れ止まらない。
健太を見ると健太も泣いていた。
『…それから…俺たちは
…智を………探した………
何日も何日も……………
何年も………
手懸かりがないかって………探した。
でも、なにも見つからなかった………』
フーッて大きな息を吐いて
気持ちを整え。
『探し続けて………
どこかで遺体が見つかるたびに
智かもってビクビクしてた。
それから3年が経ったころ。
また、若い男性の白骨遺体が見つかったんだ。』
『え?』
健太が目を見開いて震えてた。
その健太を俺の方に引き寄せて
肩を抱きながら話を続けた。
『………遺体は、
智じゃないよ。』
って言うと
『そうだったね。』
って、ほっとしてた。
『遺体の身元が判明すると
捜査は思わぬ方に流れていったよ。
犯人らしき人が浮かび
そいつの家を捜査したときに…………』
と、俺の拳に力が入る。
『…………今にも………
今にも死にそうな………
衰弱した智が…………見つかったんだ。
うっうう…………』
あのときの智の姿が甦る。
痩せほそって、
白い壁に透けそうなほど白く……
今にも死にそうな智の姿…………
『…………智は……………
…………犯人に………』
と、いいかけたときに吐き気がした。
口にも出したくない事実。
健太は、何かを悟ったのか
「言わなくってもいい」って言うように
俺の拳に手を添えて
首をふった。