『ちょ………ちょっと
翔くん。
翔くんってば。
止まって!!』
俺の腕をグイグイ引っ張って行く翔くんの手を掴んで立ち止まった。
俺の方に振り向いた翔くんの顔が怒ってる。
なんでそんなに怒ってるんだよ。
意味がわかんない。
『今のは、先生に失礼なんじゃない?』
翔くんが怒ってるから、
俺もちょっと不貞腐れた言い方になる。
すると、翔くんが
『…………逆に
お前は、あんなこと言われて平気なの?』
と、不思議そうに尋ねるから
『あん…な…こと?』
って、なんだ?
と、首を捻った。
「俺が怒るようなこと先生が言ったけ?」
先生の家での会話を思い出しても
ピンとこない俺。
そんな俺をみて
『………先生は………』
と言って、
突然、翔くんは口を閉ざした。
「先生は…………」って
何が言いたいの?
考え込んでる翔くんに
『しょ……う…くん?
どうしたのさ。
突然黙りこんで………
怖い顔してるよ。』
と、顔を覗きこんだ。
『あっ。
ごめん。』
と、俺が怖い顔してるって言ったからか
自分の顔をパンパン叩いて整えてた。
『あんなこと……………って?
先生、何か変なこと言った?』
と、聞いてみると
すぐさま
『言っただろ。』
と、また語気を強めた。
先生の何に怒ってるんだろう………?
翔くんは、息を整えてから
『先生は………
健太に……俺のところに行くようにと
進めたんだろ?
後悔のないようにって進めたんだろ?』
って、聞くから
『……う……ん。
俺が翔くんの事を相談して
そう言われた。』
と、答えた。
すると、翔くんの顔がまた怒ってる顔になって
『そう言った先生が
俺に智が戻ってくるまで
忘れずに待っていてあげてくれ
って言ったんだぞ。
何年になるかわからないのに………
もう一度会える根拠もないのに……
おかしいだろ…………』
と、俺をみた。
『え~……
おかしくないよ。
翔くんは、絶対に智君に会えるよ。
俺なんて、だいたい翔くんのセフレ程度で十分なんだ。
それ以上求めてないよ。
翔くんの智君になってあげるんだから……』
と、俺が翔くんに微笑みかけた。
俺は、翔くんの側にいれたら
それだけでいいんだから………
『はああ~。
なにそれ?
俺が健太を好きにならなくてもいいってこと?』
『うん。
翔くんは、智君を好きでいていいよ。』
だって、翔くんが智さんを
忘れることなんてできるわけがない。
先生が領さんを思っていたように
翔くんも、智さんを思い続けてたら
必ず、会える。
俺はそう信じてるんだから。
翔くんが俺を諭すように
『………おかしいだろ。』
と、言うんだけど
『そうかなあ……
俺は…………
俺は、俺を好きになってもらわなくてもいいんだ。
愛だの恋だの欲しくない………
真っ平ごめんだ。』
と、答えてしまった。
口からポロっと出てしまった言葉に。
『はあああ~?
どういうことだよ?』
翔くんのあきれた声が響く。
『……………一人の人に………
縛られたく……ない………』
と、俯いた俺。
翔くんが、呆れた顔で俺を見て
『お前は…
俺を好きなんじゃないの?』
と、聞く。
『好きだよ。』
俺は、飛びっきりの笑顔で答えた。
「好きだよ」
でも、それとこれは違うんだよ。
翔くん………
俺は、翔くんを好きだよ。
でもね。
それは…………
おかしな話かもしれないけど
智さんを大好きで忘れられなくて
苦しんでる翔くんが好きなんだ。
だから、慰めてあげたいの……
俺を……
俺を好きになって欲しい訳じゃないんだ。
俺…………
怖いんだ…………
俺を本気で好きなんて言われると
怖くてしかたがないんだよ。