息を弾ませながら
『智に繋がる手懸かりが
見つかったって本当か?』
と、潤が走ってやってきた。
俺の電話にすぐ飛んできたのだ。
教えられた駅から歩いて5、6分の所にあるオートロックマンション。
その703号室が大野家らしい
エントランスの呼び出しボタンを押すと
モニターから懐かしい声が聞こえ
俺たちの姿を確認したのか
自動ドアがスーっと開いて
「どうぞ」と言った。
エレベーターに乗って7階まで
潤と二人
これから何が起きるのか
ドキドキしていた。
どんな真実が待ち受けているのか………
俺たちは、どんな真実も
受け入れられるだろうか………
不安に押し潰されそうだった。
表札に名前はなく
一瞬、本当にここでいいのか不安になった。
潤と顔を見合わせて、覚悟を決めて
チャイムを押す。
すると玄関のドアが開いて
中から、智のお母さんが顔を出した。
『……いらっしゃい。
櫻井くんに、松本くん。
久しぶりね。
随分、大人っぽくなって。』
と、俺達を招き入れてくれた。
5年ぶりの智のお母さんは
あの頃よりちょっとだけ老けたみたい
でも、明るい元気なイメージは替わらなかった。
リビングに通されると
智のお父さんも帰ってきていて
『二人とも、久しぶりだな。』
と、微笑んで
『よく、ここに辿り着けたな。』
と言う。
『……5年…………
5年かかりました。』
『そうだね。
ごめんな。
………突然………
姿を消して…………
心配しただろ。』
と、お父さんが言うから
俺も潤も今までの不安と
会えた安心感で訳がわからなくなって
涙が溢れだした。
『二人とも………
ごめんなさいね。
心配かけちゃったわね。』
と、お母さんが
俺たちの前にお茶を出してくれた。
『…………何から………聞きたい?』
と、試すように俺達に聞く。
『全部。
全部教えてください。
智くんが、自殺したって…………
俺のせいで自殺したって…………
俺…………』
俺の言葉にお父さんが
『櫻井くんのせいじゃないよ。
全ては…………』
と言って、黙りこんだ。
お父さんたちにとって
犯人の名前すら口に昇るのを許さない
と、いった具合に。
『………………櫻井くん…………
松本くんも、君達には申し訳ないことをしたね。
たくさん力になってもらったのに………』
と言って、お父さんが俺達に頭を下げた。
『大人って、狡いのよ。
自分の子供をみんな守りたいの。』
そう言って、お母さんがお父さんの隣に座った。
『大会受験を控えてたあなたたちに
私は、嫉妬したの。
「なんで、智だったんだろう。」
「なんで、この子達じゃなかったんだろう。」って
あなた達が元気で笑ってたりすると
「智は、毎晩悪夢で眠れないのに……
智は今でも怯えてるのに………
なんで?」って
あなた達を恨んでしまうの。
恨む矛先が違うのにね。
…………酷いでしょ。』
お母さんの正直な気持ちを聞いて
胸が苦しくなった。
『君達も丁度受験を控えていたからね。
大人たちで決めたんだ。
君達が大人になって
ちゃんと社会人になるまで………
そして、その時になって
まだ智に会いたいとか
探してるって分かるまで
黙っていようって………』
『…な……な……んで?』
ってことは………
俺の親も知っていて黙っていたってこと?
『…………子供の感情なんて……………
宛にならないからね。』
と、お父さんが俺たちを見て話を続けた。
『今好きでも、
次の瞬間、新しいものに目が移る。
………子供は気まぐれなんだよ。』
『『…………………』』
俺たちは、反論できなかった。
『………地元では、変な噂が尾ひれをつけて
俺たち家族に襲って来て…………
俺たちは疲弊してた。
それに、これ以上………
智が苦しむのを
私たちが見ていられなかった。
だから…………………
知らない土地にいくことに決めていたんだ。』
『あなた達が、智のお見舞いに来ていた日。
私はここのマンションの契約に行っていたのよ。
………なのに……………』
と、お母さんが泣き出した。