信じられない話に耳を背けたくなる。
彼女はずっと耐えてきたんだ。
どうしたらいいのか
何を言えばいいのか
全く思い浮かばない。
それは、俺だけじゃなかったようで
養護教諭の女性が彼女を抱き締めていた。
『あいつは………許せない。』
と、怒りを露にして声を震わせて彼女は言う。
『本来なら……………助けてくれたり、
相談に乗ってくれる立場のはずでしょ。
違う?』
怖いぐらい俺達を睨み付けた。
『『………………』』
蛇に睨まれた蛙のように
二人で黙った。
『だから、……………私の証拠なの。』
と言って、お腹を擦った彼女。
『…もし……もし、違ったら?』
『違わない。』
彼女には、確信があるんだ。
『そ………そっか…………
聞いていいか?
………あいつ………って?
誰なんだ?』
俺は、興味本意とかではなく
そいつに謝罪させて
今後の事を話し合うべきだと思って聞いたのに
『それは聞かないほうがいいよ。
先生たちにまで、迷惑かかるといけないからさ。』
って、彼女は言う。
迷惑って………
彼女は一人で何もかもしようとしてるんだ。
『明日、一人でお医者さんに行ってきます。』
『え?
今日、お母さまと行ってきたんじゃないの?』
『母は、仕事があって
明日も余裕ないらしから…………』
と、俯いた。
『じゃあ、私が付き添うわ。
いいでしょ。』
養護教諭が、明日病院に連れて行ってくれることになった。
『でも大丈夫なの?
今、家に帰っても
なにもされない?』
『そうだよ。
家には、あの叔父さんと言う
取り立て屋がいるじゃないか。
そんなところには帰せない。』
『………………』
『私の家にしばらくいなさいよ。』
と、優しい養護教諭が提案して
彼女も承諾した。
一旦、彼女が家に戻ると
お母さんはまだ帰宅前で
あの叔父さんはいなくなっていた。
必要な物を鞄に積めて
母親にメールをして彼女は出てきた。
そして、俺の車で養護教諭の家まで送り
重い気持ちを引き摺ったまま家に帰ってきた。
時計を見ると12時になる。
「はあ~」と、大きなため息がでて
しばらく、ハンドルに顔を埋め
彼女の言葉を咀嚼する。
考えれば考えるほど、「このままじゃいけない」という思いが込み上げる。
でも、俺にはなんの知恵もない
無力だと痛感する。
どうしょうもない気持ちを抱えたまま帰宅。
智の言葉もあやふやに聞きながら
『おやすみ。』
と言ってリビングを出た。