『遅くなっちゃったね。
お母さん、待ってるかなあ…………』
智が心配そうな声を出した。
『大丈夫だよ。
そう言えば、和も家にいるはずだな。』
『ああ。そうか二宮君。
………会えるかな……』
『………だと思うよ。』
智の昔の家から、歩いて5分位のとこに
俺の実家がある。
インターホンを押そうとしたら、智が深呼吸しているのが目に入って
『緊張してる?』
って、手を握ってみると冷たかった。
『……さっき…………緊張解れてたのに……
ドキドキしてきた……どうしよう……………』
智の緊張が伝わってきた。
『大丈夫だから………
大丈夫。』
智の手をギュッって握って
インターホンに指をかけた
と同時に玄関が突然開いて
ガッツン
ドアが俺の頭に激突。
『わあっ……いった~あ』
『あー……びっくりした
驚かすんじゃないわよ。』
と、玄関から出てきてた母さん。
『こっちがびっくりしたよ。』
ぶつけた頭を擦りながら俺は文句を言った。
『だって、待てど暮らせど来ないから
何度も外を見に行って
出たり入ったりしてたのよ。』
『そりゃあ、悪かった。
…………ごめん。』
確かに「2時頃に行く」って言っといて
40分は過ぎていた。
『すみません。
僕のせいです。
ごめんなさい。』
俺の後ろで影になっていた智が
顔をひょこっと出して母さんに謝った。
その姿を見て
『大野君?
大野君なの?』
と、嬉しそうに母さんが微笑んで
智を引っ張って家に招き入れた。
とんだハプニングで突然のご対面となった。
炎天下の中、歩いてきた俺達は
空調のきいた涼しいリビングに通されて
お母さんが冷たい麦茶を出してくれた。
『はい。どうぞ』
と、前に出された麦茶を
『あっ、ありがとうございます。』
と、言うと喉がカラカラだったので一気に飲み干した。
空になったコップにまた麦茶を注ぎ足してくれて
今度はゆっくり飲んだ。
手土産の焼き菓子を「美味しそう」って言って
お皿に並べて出してくれて
俺の前に座った。
「翔君に………ちょっと似てるかな………」
いやいや、
この場合、翔君が母親似ってことだよね。
なんて考えてたら
お母さんの方から
『大野君は、私のことを覚えてる?』
と、聞いてきた。
「覚えてる?」ってことは、俺が知ってるって前提だよな。
俺は頭の中で、遠い記憶を遡る。
『大野君のお母さんとは仲良くしてたのよ。
だから、大野君の家にも何度かお邪魔して
そこで会ってたの。
覚えてないか………』
って、お母さんが残念そうに話してくれて
『でも、元気そうでよかった。』
と、ニッコリ笑ってくれた。
『………ありがとう…ございます。』
「どうしよう…………
会話が続かないよ。どうしよう………」
優しそうな笑顔のお母さんだけど
俺としてはある意味お姑さん。
どう接していいんだろう?
何をはなしたらいいの?
そもそも、許してくれたのだってホントなのかどうかもわかんない。
だから、俯いてテーブルの脇のちっちゃな傷ばかり見てた。