ガッチャン!!
俺が智の部屋の前で
今まさにノックをしようと手をあげた時
智の部屋から何かが割れる音がした。
『智………』
俺は驚き、急いでドアを開けた。
薄暗い部屋。
智が踞って震えてた。
『…………智
どうしたの?』
俺が近づこうとすると
『来んな!』
と、言われて立ち止まった。
目が慣れてきて部屋を見渡すと
母の形見の鏡台の鏡が割れていて
目覚まし時計が下に転がっていた。
『………智………怪我は?
………大丈夫?』
と、声をかけると
弱々しい声で
『………潤…………
俺を、完全無視だったんじゃないの?』
と、言われた。
智が泣きそうな顔をしてるのに、笑って
『……うそ…………ごめん。
…………なん…………でも…ないから。
………出てって……くれる』
と言って
ヨロヨロと立ち上がり、割れた鏡の破片をを拾い出した。
『…智。
危ないから俺がやるよ。』
俺が手を出し破片を拾い出したら
『………いいから………俺に構うな。
どうせお前だって
俺の前から居なくなるんだから………』
と、手を払われた。
『はああ?
誰がいなくなるんだよ。
俺はずっと智の側にいるつもりだけどな。』
そう言って、無理矢理手を出して片付けた。
『………俺を無視してたんじゃないのか?』
『………………』
『…………俺は…………お前が高校卒業したら
この家を出るつもりなんだ。』
と、突然智が変な事を言い出した。
『え?
突然、何言ってるの?』
『突然じゃないよ。
ずーっと前からそう決めてた。』
『はあ?……なにを勝手に決めてるの?』
智が何を考えてるのかわからない。
多分、櫻井の事や和の事
そして、智を無視し続けた俺の事を
色々考えてるうちに、変な結論に至ったんだろうな。
『俺には智が必要だよ。』
言い含めるように優しい声で話しかけた。
『俺は…………
あの時、皆と一緒に死んでたらよかったんだ。』
焦点の合わない目で言い出すから
怖くなった。
『…………何…………言ってんの?』
『そしたら、こんなに惨めになることも
苦しむことも、
悲しむことも…………無かったのに……
俺の人生に、良かったことなんて何もない…』
『何言ってんの?
俺は?
俺は、智がいなかったらどうなってたと思うの?
智がいたからここまで大きくなれたんだよ。』
『…………』
『死んでたらよかったなんて言うなよ。』
と、思わず智を抱き締めた。
『……………お前は……知らないんだよ。
俺がどんなに惨めか………
どんなに惨めな人生か…………』
俺の腕を解いて
突然、智が上着を脱いで俺に背中を向けた。
一瞬、俺の呼吸が止まった。
いつも懸命に隠していた智の背中
初めて見て
智の苦しみを知った。
15年前の悲劇の痕
『…………驚いた?
これが俺の秘密。
こんなに醜い………背中
初めて見せてごめんね。』