空室となった智さんの部屋の前で
『やっぱり………』
と、呟いた。
何となくそんな予感はしてた。
もう、この部屋にはいないんだろうな………って
そして、まさか事務所まで空になってるなんてね。
俺の車は二宮さんが運んでくれたんだろう。
マンションの駐車場に置いてあって
車の鍵は玄関のポストの受け口に落ちていた。
車の中には、遼の携帯が踏み潰された形で投げてあった。
俺は、智さんの実家も知らないし
二宮さんや松本さんの連絡先も知らない。
智さんが生きてるのか、死んでるのかさえ
今の俺には、知る手段がない。
だけど…………
それでいいかとも思う。
真実が俺にとって辛いものになるなら
俺は知らない方がいい………
智さんは…………
今、幸せですか?
あなたが、幸せならそれでいい…………
と、言ってはみたものの
胸が張り裂けそうだ。
なんであの時、智さんを放したんだろう………
なんで………最近から俺は名乗らなかったんだろ………
後悔ばかりが押し寄せる。
あなた達の存在が、初めから無かったように
俺の前から全てが消えた。
あれからもう何ヵ月経つだろう………
依然、智さんの行方は分からず
智さんの立ち上げた事務所のホームページも更新がないまま。
智さんは、この世に存在しないんじゃないかって思えてきた。
諦めては、思い出し………
諦めては、思い出し………
"さとし"と散歩をしながら、智さんの面影を拾い歩く。