吉原じゅんぺいのブログ

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『テグザー(THEXDER)』の制作秘話が、本当に素敵だった。
若者の情熱と、大人の人情と、時代の勢いで物が作られていた80年代を象徴するような話だった。
まさに、『アオイホノオ』のゲーム版みたいな話だった。

その一部を・・・

 

1985年1月4日。
NECの応接室に、一人の若者がいた。
後に大ヒットゲーム『テグザー』の開発者として、その名を知られることになる五代響さん。
当時、22歳。
後から応接室に入ってきたNECの担当者は、五代さんの姿を見て、驚きの声を上げる。

「この日に、必ず持ってくるように」と念を押していた物を、五代さんが持ってきていなかったからだ。

しかし、驚く担当者を見つめる五代さんの目は、自信に満ち溢れていた。


時をさかのぼること半年、1984年夏。
大手出版社でゲーム開発をしていた五代さんは、数人の仲間と独立し、小さなゲーム会社を立ち上げた。
その目的は、翌年の1985年1月に発売されるNECの新型パソコン『PC-8801mk2SR』用ゲームの開発だった。

 

発売前のパソコン用のゲームを作るためには、まずやらなくてはいけないことがある。
パソコンメーカーに、発売前のパソコンの開発機を借りることである。

さっそく、NECへと出かけた五代さん。
今まで、大手出版社でゲーム開発をしていた時は、すんなりと借りることが出来たので、今回も大丈夫だろうと高を括っていたのだが、担当者からは思いもしない言葉が飛び出した。

 

「今までは、大手の出版社という信用があったから開発機を貸し出すことが出来た。
 まだ会社としての実績も、弊社との取り引き実績もない御社には、開発機を貸すことはできない。」

 

冷静に考えれば、当然の回答である。
発売前のパソコンの開発機といえば、沢山の企業秘密が詰まっているし、何よりも台数が限られている。
貸し出す相手を精査することは、企業としては当然のことである。

その言葉を受け、五代さんは一度は引き下がるが、数日後、新しいゲームの企画書、デザイン画を持って、再び、NECを訪れる。
そこで、再び、断られ引き下がるが、数日後に再び・・・というやりとりを繰り返すこと3か月。

 

世間が師走の喧騒に包まれ始めたころ。

NECの担当者が若者の情熱に胸を撃たれたのか、その粘りに根負けしたのか、ある一つの提案を持ちかけてくれるのだった。

 

「年末年始、お正月休みの一週間。
 うちも休みになるから、その間だけ限定で、開発機を貸し出そう。
 ただし、僕の独断だから、うちの会社にも、よその会社にも内緒だよ。
 それと、仕事始めの1月4日には、絶対に、返却してくれよ。」

 

2台の開発機を貸し出してもらった五代さんは、そのまま、開発機とそのほかの開発環境と数名の社員をワゴン車に乗せ、新潟のペンションへと向かう。

そこで、眠る間も惜しんで、缶詰作業でゲーム開発を行った。

 

それから一週間後の1985年1月4日。
五代さんは、NECの応接室にいた。
後から応接室に入ってきた担当者は、その五代さんの様子を見て驚きの声を上げる。
今日が返却期限の『PC-8801mk2SR』の開発機を持ってきていなかったからだ。

 

「開発機は!?」

 

担当者の言葉をさえぎるように、五代さんは、胸元に抱えた封筒から、一枚の5インチフロッピーディスクを出す。

 

「これをプレイしてください」

 

その静かな迫力に押されて、担当者は社内の開発機で、そのディスクに収録されたプログラムを起動させる。
ゲームがスタートした。
ロボットから飛行機へと変形するマシンを操り、所狭しと動き回る敵を打ち倒すシューティングゲーム。

30分ほど無言で遊び続けたのち、担当者は、その手を止め、一瞬考えてから言葉を発した。

 

 

「五代くん、開発機、あと何台必要?」

 

 

その時、担当者が遊んだゲームこそが、後に100万本の大ヒットを記録することになる『テグザー』のプロト版であった。

 

これが、若者の情熱と、大人の人情と、時代の勢いで物が作られていた80年代のちょうど真ん中に、人知れず起きていたお話。

 

さらに余談であるが、その『テグザー』のヒットが、『PC-8801mk2SR』を大ヒットパソコンへと押し上げる一要因となったことは、後のあらゆる資料が物語っている。

 

 

 

胸アツだよ!!

胸アツ!!

あの大ヒットゲームの制作の裏側には、こんなエピソードがあったなんて!!

マジで、この時代の若者たちの話で、ドラマか漫画が作れるんじゃないかって本気で思う!!

 

以上、『テグザー(THEXDER)』の開発秘話に感動した…というお話でした。