知り合いのパブで歌ってきたんだ
まばらな拍手 気儘なおしゃべり 無粋な嬌声
そんな中で僕は人生や愛や女の子のことを思う歌を歌った
これっぽっちのチップがその見返りさ
僕の思いなど世の中は知っちゃいない
僕の心の値段がこのチップ
  
食べるより飲んで気分をまぎらわせたかった
なけなしのチップを握って酒場に入った
見つけたんだそこで 女神のような女の子
  
思いきって話しかけた
ウイスキーを舐めながらありったけの面白い話をしてやった
けれど女神は退屈そうに上の空
最後の手段 僕は椅子に立ち上がってギターを弾いた
精一杯おどけて体を振って足を踏み鳴らした
   
最悪だった
女神は怒って帰ってしまうし店主は僕を警察に突き出した
おかげでその晩は留置所に一泊さ
  
ボージャングルにはそこで出会った
ニューオーリンズの牢屋の中だ
彼は人生の大先輩でタップダンスの芸人だった
牢屋の中でボージャングルは僕を元気づけようと踊ってくれた
軽やかにタップを踏み高く跳んでは舞い降りる
ダブダブのズボンとおどけた仕草に大笑いさ
看守までも大喝采
ボージャングルは白髪頭を恭しく下げてお辞儀をしたもんだ
  
夜が更けて
ボージャングルは擦り切れた靴で僕の隣りに座り話してくれた
犬と一緒に旅して回った15年の日々
あの町この町の祭りを回り踊り続けた日々
犬と一緒に笑ったことや泣いたこと
腹を空かせて抱き合いながら眠った田舎道
ボージャングルは訥々と遠くを見ながら話してくれた
  
愛犬が死んだ日のことは忘れはしない
庇を貸してくれた農家の納屋に横たわり苦しそうに息をした
ボージャングルがのぞきこみ背中を撫でると尾を振って
優しい瞳で悲しげにボージャングルを見つめてた
  
20年経っても忘れない あの時のことは忘れない
ボージャングルは一人になった
それでも破れたシャツ着て旅をした ダブダブズボンで歩き続けた
祭りの町の道端で大喝采を浴びるためステップ踏んで高く跳ぶ
  
ボージャングル
ボージャングル
もっと聞きたいアンタの話 人生のことや女のことも
ピシッと踵を打ち鳴らしキメたポーズで泣き顔の
アンタの話を聞かせて欲しい