ワルという劇画があった
高校生ながら剣の天才でありすこぶるニヒルなワル
氷室洋二が主人公
この劇画で妙に印象に残っている話がある
     
学生運動の闘士でありセクトのリーダーが氷室と対立する
さすがの氷室も彼の精神の強さに圧倒されそうになる
氷室は自分を凌駕しかねない男の胆力は
革命にかける揺るぎない信念と意志と情熱からのものと
敵ながら敬意を感じ敗北も受け入れる心境になりかけた
      
ところが
ひょんなことから彼の秘密を知る
それは 彼が不治の病に冒されているということだった
氷室は彼の超人的な胆力が崇高な精神からのものではなく
むしろ下卑た腐れた精神からのものと見抜く
形勢は一気に逆転し氷室は軽蔑のまなざしで男を威圧する
そして男に決定的な事実を告げる
男の病は誤診だったのだ
      
事実を知って男は生への執着をみせ
氷室を凌駕しようとした胆力は瓦解し惨めにも醜態を晒す
      
今 なんか
この闘士のような似非胆力で
世をはかなみ生に投げやりな人が増えてないか
自分の不幸を尺度に世界の不幸を受け入れようとする
守るもの愛するものがないから
イッショクタの不幸を有ってもいいと考える
戦を容認する雰囲気はこうして醸成されていくのではないかと
恐ろしい

ワイというタイの挨拶
顔の前で手を合わせ微笑みながら会釈する
とても温かい心が伝わる作法だと感じた
この習慣がタイで廃れてきているらしい
      
時代はどこに向かっているのだろう
僕はますますセンチメンタルなロマンチストになりそうだ