生き方 なんて言える程のことをしてきたと思わない
人生 なんて気恥ずかしくて口にする勇気もないし
      
僕は貧しく年端も行かない子供だったけれど
世の中の嘘っぱちには気づいていた
最初は不思議だったし冗談だと考えていたのだけれど
どうやらそれが世の中の姿らしいと感づいてしまった
     
その日から僕は何かちがうものを探し始めたんだ
それは形も重さも色合いも分からない
ただ ちがうもの であることしか分からない
僕はちがう町やちがう風景やちがう人をたくさん見た
何か ちがうもの に出会うために
     
とても深く愛し合ったのに別れた
とても強く抱き締めたのに離れた
慰めきれない癒しきれないことが僕の存在なのだと知った
      
あれ以来
目の前にあることに夢中になって時を送ってきた
永久にサンドバッグを叩き続けるボクサーのようだった
僕の拳は痛みを受け入れてなお激しく打ち続けた
拳を腕を体を心を突き上げてくるものは何の炎なのだ
     
炎が静かになった時
拳が人を傷つけなくなった時
僕は生きて来たことを受け入れるのだろう
今この地に居ることが
生きて来たことなのだと受け入れるのだろう

生き方 なんて言える程のことをしてきたと思わない
人生 なんて気恥ずかしくて口にする勇気もないし

       
       
        The Boxer/P.Simon