死のうと思っていた。今年の正月、よそから着物を一反もらった。
お年玉としてである。着物の布地は麻であった。
鼠色のこまかい縞目が織りこめられていた。
これは夏に着る着物であろう。
夏まで生きていようと思った。

             ~「葉」 太宰 治~

「葉」という作品はずっと記憶の底に沈んでいた
ただヴェルレェヌの詩と一緒に
この書き出しの文章はおぼえていた
一箇所、記憶違いしたまま

私はこのように記憶していたのだった

  死のうと思っていた今年の正月、

読点を抜かして記憶していたのだった
だから、あるいは、そして
太宰は正月に死のうと考えていた 
と思っていたのだった

この書き出し  けだし名文である
しかし 私の記憶違いの文も
まんざらではないと思うのである